スマホ時代に「手帳」なぜ人気再熱? 「人生をサポートする」プラスアルファの効能とは

 書店の年末の風物詩といえば、手帳売り場の風景だろう。新年に向けて手帳を買い換える人も増えるこのシーズン。スケジュールや仕事の管理、日々の振り返りといった使い道が定番の手帳だが、近年はそれに加えて様々な用途に使える、いささか変則的な手帳が数多く発売されているのをご存知だろうか。

 例を挙げると、現代における手帳ブームの立役者である「ほぼ日手帳」は、発売開始から20年以上を経て現在は「オリジナル」「カズン」「HON」「weeks」「day-free」「ほぼ日5年手帳」のラインナップを展開。さらに1日1ページという特徴を持つ「オリジナル」には半年づつにわかれた分冊版の「avec」、英語表記の「Planner」というバリエーションが存在する。

 また、SNSで話題となった手帳としては、ディスカヴァー・トゥエンティワンから出版されている「お姫さま手帳」がある。こちらは手帳内での対話相手となる「執事」を設定し、毎月のワークや振り返りの際には執事からの質問に「姫」の立場で回答していくことで、自分の気持ちや叶えたい目標が見えてくるという手帳。そのユニークさからネット上で大きな注目を浴びた手帳である。

 ほかにも、根強い人気を誇る高野文子のコミック『るきさん』を題材とした、見た目は文庫本で中身は手帳という「るきさんの文庫手帳2026」も発売となった。ロングセラーであるちくま文庫の「文庫手帳」シリーズの新作で、口絵・マンスリーカレンダー・メモ部分に高野文子のイラストを配したスペシャルエディションとなっている。伸びやかな高野文子の描線も手伝って、のんびりした気持ちで使えそうな一冊だ。

 これらの手帳の他、「朝専用」をうたった「朝活手帳」、スケジュールとお金の記録を同時に書き込める「お金がどんどん貯まる手帳」、行動科学マネジメントのメソッドを盛り込んだ「やりたいこと実現手帳」など、様々な用途に特化した手帳が多数販売されている。多くは広い意味での自己実現や仕事・生活の充実を謳っており、単なるスケジュール管理や日々の振り返りに使えるだけではなく、現代の手帳はプラスアルファの効能を求められていることがわかる。すでにスマートフォンが普及している現在、スケジュール管理だけならば専用のアプリケーションで事足りる。わざわざ自分の手で書き込まなければならない「紙の手帳」には、従来の手帳以上の目的や効果が求められているようだ。

 では、現在の手帳をめぐる需要や魅力はどのような点にあるのか。前述の「お姫さま手帳」や「朝活手帳」をはじめ、数多くの手帳を発売しているディスカヴァー・トゥエンティワンの事業担当者にメールインタビューで聞いてみた。

使う人の人生をサポートする手帳

──現在のディスカヴァー・トゥエンティワンの手帳のラインナップについて、改めて教えてください

 弊社では、「読む、書く、変わる。」をテーマに、単なるスケジュール管理ツールではなく、使う人の人生をサポートする手帳を展開しています。2026年版は全11点のラインナップです。

 定番商品としては、自由度の高さが大好評のロングセラー『DISCOVER DIARY DAY TO DAY』があります。1日1ページで、スケジュール帳にも日記帳にもノートにも自由自在に変身する手帳です。また、著者プロデュース手帳として、10周年を迎える『週末野心手帳』、朝活第一人者プロデュースの『朝活手帳』、腸活×漢方×栄養学をもとにした『心と体がバテない食薬手帳』、テレビ・雑誌・新聞で話題沸騰の『pure life diary』、自分軸を見つけて自分らしい人生を歩むための『自分軸手帳』、手帳の中の執事さんと対話して自己肯定感を高める『お姫さま手帳』などを揃えています。さらに、全国1200の学校、のべ259万人以上の中高生が活用してきた『フォーサイト ふりかえり力向上手帳』もご用意しています。

 それぞれ異なるアプローチで人生をサポートする、出版社ならではのコンテンツ力を活かしたラインナップが特徴です。

──手帳事業のセールス面についてはどのような状況でしょうか?

 具体的な数字の開示は控えさせていただきますが、おかげさまで手帳事業は堅調に推移しております。長年ご愛用いただいているリピーターの方も多く、SNSでの口コミも広がっています。ユーザー像としては、20代後半から40代の働く女性が中心で、「なんとなく過ごす日々を変えたい」「自分を成長させたい」という意識を持った、向上心のある方々にご支持いただいています。

 特に『お姫さま手帳』は完売店が続出するなど非常に高い人気をいただいており、『食薬手帳』『朝活手帳』も増刷するほど好調です。『食薬手帳』と『朝活手帳』は、食生活や朝の時間といった生活に密着したニーズに応えている商品で、日々の暮らしそのものを整えたいという方々に支持されています。

──「お姫さま手帳」「食薬手帳」など、いわゆるビジネス用の手帳とは異なる手帳も発売していますが、これはどういった需要に応えているアイテムなのでしょうか?

 これらの手帳は、「仕事の効率化」ではなく「自分らしく、心地よく生きたい」といったニーズに応えている商品です。一般的なビジネス手帳が「時間を管理する」「タスクをこなす」ためのツールだとすれば、弊社の手帳は「自分と向き合い、理想の生き方を実現する」ためのツールです。

 例えば、『お姫さま手帳』は手帳の中の執事さんとの対話を通じて自己肯定感を高めながら日々を過ごしたい方に、『食薬手帳』は食を通じて心身を整えたい方に、『pure life diary』はTODOリストではなくTO BEリスト(なりたい自分)から考えたい方に、それぞれ特化したコンテンツとアプローチを提供しています。

 手帳を開くこと自体が楽しみになり、自分を見つめ直すきっかけになるような体験を提供しています。

──「紙に書く手帳」の、デジタルにはない使い勝手の良さや魅力はどのようなものだとお考えですか?

 デジタルツールの利便性は否定しませんが、紙の手帳には「自分と向き合う時間を作る」という独自の価値があると考えています。

 手を動かして文字を書く行為は、思考を整理し、感情と向き合うプロセスそのものです。デジタルのようにさっと入力して終わりではなく、書きながら「本当はどう思っているんだろう」「これからどうしたいんだろう」と自分に問いかけることができます。

 また、手書きだからこそ、そのときの気持ちが筆跡に載っています。後から見返したときに、文字の大きさや勢い、丁寧さから、当時の気持ちや状況が蘇ってくるんです。開いてしまった白いページも、「あのとき忙しかったなぁ」と思いを馳せられる。デジタルでは味わえない、温かみのある体験です。

 パラパラとページをめくって過去を振り返ったときに、「あの時こんなことを考えていたんだ」「こんなに成長したんだ」と視覚的に実感できるのも、紙ならではの魅力です。手帳の厚みが増していくこと自体が、積み重ねてきた日々の証になります。デジタルが「効率」を追求するツールだとすれば、紙の手帳は「自分らしさ」を育み、「人生を豊かにする」ツールだと言えるかもしれません。

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