「1日8回体重計に乗っていた」宮田愛萌、ダイエットで気づいた“理想の身体” 最新小説で描く食と美の関係

 タレントとして活躍する傍ら、作家としても次々と意欲的に作品を発表している宮田愛萌。最新小説『おいしいはやさしい』(PHP研究所)では、生きるうえで欠かせない“食”にスポットを当て、食べるという営みとともに4人の女性の人生を浮かび上がらせる。

 食事は大好きだけれど、食べるという行為はそれほど得意でないと語る宮田が、過去のダイエット経験を踏まえながら、「そんなに頑張らなくても大丈夫」と語りかけるように描きだす温かな連作短編集だ。“食”を通してやさしさを伝える宮田に、本作の執筆の背景を聞くとともに、彼女が抱く“食事”と“美”についても語ってもらった。

「もっと食べたら?」心配の声がつらかった

――まずは“食”をテーマにしようと思った経緯を教えてください。

宮田:最初のきっかけは、担当編集さんがご飯の描写をめちゃめちゃ褒めてくれたからなんです。「そんなに褒めてくれるなら、じゃあ書きます」と(笑)。もともと食事に対しては強い思いがあるのですが、食べること自体はそこまで得意ではなくて。なんというか、食べるなら“本気のご飯”を食べたいんですよね。親が私のために作ってくれたご飯とか、大好きな人たちと一緒に食べるご飯とか。逆に、仕事の合間になんとなく食べるようなご飯なら、食事よりも自分の好きなことに時間を使う方がいいな、と思うんです。

 だけど、自分があまり食べられなかった時期があるからこそ、「ご飯って大事だよね」という気持ちは人一倍強くて。同時に、その時期に周りから言われた「もっと食べたら?」という言葉がすごく嫌だった。じゃあ、そういうことを言わない小説があったらいいなという思いから、このお話を書きました。

――「カフェ・オヴィ」を軸に、4人の女性にスポットが当たっています。1作目「阪本弥子」の主人公・弥子は料理が嫌いという人物。彼女から物語に入っていくのが印象的です。

宮田:私は料理するのが好きなんですよ。だから逆に、料理嫌いな人の視点を知りたいなと思ったんです。

――料理嫌いな彼女が料理にチャレンジしてみる、というのも宮田さんから読者へのメッセージのように感じました。

宮田:実はプロットでは、全く違う終わり方でした。最初は、全部外注する形で解決すればいいと考えていたんです。でも、料理をするのが嫌いということを夫の泰理に受け入れてもらえたら、ひとつ彼女の中で消化できるものがある気がしたんですよね。私自身が“チャレンジ”を大事にしていることもあって、一旦、弥子が料理に挑戦してみるところで終わってもいいのかなと。きっとこの二人は近い将来、外注がメインになると思うんです(笑)。でも、トライする着地にしたくてこのラストに。

――宮田さんは登場人物を作ったら、彼らに脳内で演じてもらい執筆していくそうですね。

宮田:そうです。登場人物本人に、人物の解釈は任せています。その解釈を持ち寄って、監督である私も加わって、頭の中で話し合うという形です。弥子が料理にチャレンジする着地になったのも、脳内会議で「彼女の性格なら、まず挑戦してみると思う」となった結果です。

――では、執筆中の脳内はかなり賑やかなことに?

宮田:めっちゃ喋っています(笑)。脳内でエチュード(即興劇)をやってもらうと「待って、その人ってそんなこと言うの?」と、作者の私でも予想していない方向にいくことも多くて。その都度、脳内で話し合いをしながら物語の方向性を探っています。

 私一人じゃなくてみんなで作ったという感覚ですね。彼らの存在に勇気をもらっていますし、編集さんにダメ出しされても「私だけじゃなくて、みんなの責任だしな」と思えるので(笑)、少し気持ちが楽になっています。

目指すは“お金のかかっていそうな体”、宮田が思う食事と美

――2本目の「枦元海」では主人公の海と、食べないダイエットをしている姉・麦が登場します。ダイエットというテーマを取り上げたいという思いがあったのでしょうか?

宮田:私自身、周りから心配されるくらいダイエットをしていた時期があったので、いつかそんな自分を客観的に見た姿を小説にしてみたいと考えていたんです。今回、“食”をテーマにしたので、せっかくならここで書こうかなと。

 今思えば本当にひどい食生活だったし、ダイエットのやめ時もわからなくなっていました。そこまでいくと、もはや痩せたいというより、数字が減ることで達成感を得られるんですよ。勉強すれば模試の点数が上がるのと似た感覚ですよね。

 食べなければ体重は減るし、痩せると褒められる。「痩せてるね」って褒める文脈で使われるじゃないですか。そこが自己肯定感にもつながるから、当時は体重計を持ち歩いて1日8回くらい計測していました。この時間にこういう食事をすると、数字がどう動くのか比較検証して。今思えばバカだなって思うんですが(苦笑)、当時は真剣そのものでした。

――ご自身がダイエット中に感じた思いを作品に反映されているんですね。

宮田:みんなが心配してくれたことも参考にしましたが、どちらかというと、ダイエット中に言われて嫌だったことを落とし込みました。ダイエット中の人と、それを心配している人との間にある分かり合えなさとか。カロリーがわからないから、家のご飯があまり食べられないというのも、実体験に基づいています。

――痩せていることが“褒め”の文脈にあるという話が出ましたが、今の宮田さんはどんな体型が美しい、理想的だと感じていますか?

宮田:ある程度のことに耐えられるたくましさが1番だなと思っています。今目指しているのが、“お金のかかっていそうな体”なんです。いっぱい食べて、いっぱい筋トレして、脂肪も筋肉もたくさんついている体を目指しています。

――すごく素敵な考え方ですね。理想とする美が、細い体型からしなやかでたくましい体型に変わってきたと。

宮田:変わりましたね。ジムに通い始めて1年半くらいですが、いい筋肉の人を見ると「負けないぞ」と思いますし(笑)。今でも体重が増えると、一瞬「うわっ」って悲観してしまうんですが、私の体重が増える度に、ジムのトレーナーさんが「すごいですね、こんなに増えていますよ!」と喜んでくれるんですよ。私もそれが嬉しくて。ジムに通って本当によかった。

「こんなお店があったらいいな」に込められたメッセージ

――カフェのメニューはもちろん、おいしそうなご飯がたくさん登場します。どんな基準でメニューを選ばれたのでしょうか?

宮田:レシピ本を見て試作できそうなメニューを選びました。「カフェ・オヴィ」以外のお店の描写は、実際に私が食べに行ったお店を参考にしています。作中に出てくるハンバーグは何度も作ったのですが、私も偏食なところがあって玉ねぎが大嫌いなんです。どのレシピにも玉ねぎが入っているので仕方なく買ったのですが、「なんで私、玉ねぎ買ってるの?」という気持ちに(苦笑)。レシピ通り玉ねぎを炒めたものの、結局入れませんでした(笑)。

――では、宮田さんにとって大好きなメニューや、心を救ってくれるご飯は?

宮田:カチャトラというイタリア料理です。母も祖母も作ってくれた我が家の味ですね。それと生姜焼き。うちの生姜焼きにはピーマンが入ってるんです。お肉が得意ではないけどピーマンが好きな私のために「ピーマンを食べるついでにちょっとでいいからお肉も食べてね」という母の気遣いが詰まっていていると感じます。

 他にも、ファーストフードやお弁当用の冷凍おかずなんかが苦手で。お弁当もかわいく飾られたキャラ弁じゃないと食べられなかったので、母は本当に苦労したと思います。

――宮田さんは偏食気味だけれど、料理をするのは好きというのも少し意外に感じました。

宮田:もともとお菓子作りが好きなのですが、お菓子も料理も作っている過程が好きなんです。得意料理がラザニアで、ホワイトソースを作るのが好きなのですが、ホワイトソース自体は苦手で。だから、私の作ったものを食べる担当の父が太っていくんです(苦笑)。今後は健康を気にしてあげなきゃいけないですね。

――偏食のオーナーがオープンした「カフェ・オヴィ」。このお店には宮田さんの「こんなお店があったらいいな」が詰まっているんですね。

宮田:まさにその通りです。ぱっと見て分かる材料ならいいのですが、スパイスなどは料理を見ても分からないじゃないですか。特定のスパイスが入っていると、料理全部が食べられないという人はきっと私だけじゃないと思うので、「全部書いておいてほしい!」という熱意を込めました。

――4本の作品を通して、「頑張りすぎなくていいんだ」と思えたのと同時に、こんな食との向き合い方があるんだなと、ハッとした気持ちにもなりました。読者にはどんな気持ちを持ち帰ってもらいたいですか?

宮田:最初から一貫して、偏食の人やご飯が苦手な人に共感してもらえたらいいなという気持ちがあります。でも、次第に好き嫌いがない人にこそ、ぜひ読んでもらいたいと思うようになりました。この本を通じて、「好き嫌いがあることや、食べるのが苦手ってこういうことなんだ」と少しでも知ってもらえたら嬉しいです。

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