『ゼロトレ』石村友見に聞く、NYで1000人を育てたヨガ講座の極意「目的は心と体を整えて健やかに生活すること」
「なぜか痛みがとれる」と話題のレッスンを体系化したヨガ講座
石村:先程もお話したようにもともとは自分自身がボロボロで、本当に5分も立っていると痺れてくるような体だったんですが、ヨガをやるとなぜか痛みがとれる。「これってなんだろう?」と思いながら、ヨガを研究してインストラクターになりました。その後も、どうしたら心も体も健やかに生きられるのか、幸せとは何かを学び続け、そこで得た知識を踏まえて生徒さんたちにヨガを教えていくと私自身の心と体のバランスも整っていく感覚があったんです。
そうしていくうちに自然と生徒さんの数も増えてきて、今度は「先生のところに来ると痛みが取れる。これって何なんですか?」と問われるようになりました。私としては「ヨガです」としかお答えようがなかったんですが、どうやらヨガに加えて、ハーバード大学医学部の「Health and Wellness」講義で学んだウェルネスの観点も加わって、独自のスタイルを築いていたんですね。そんな「明らかに他のヨガレッスンとは違う」という言葉に、改めて自分がやっていることを言語化してみようとまとめたのが、このヨガ講座のプログラムでした。
もともとは私自身の体、そして私と同じようにしんどさを抱える人たちの体を解き放つためにという思いから始まったものなので、「体がかたくてポーズがとれないからできない」とかじゃないんです。むしろ、そういう人こそしなやかに動く本来の体を取り戻すために必要なのがヨガ。みんながアクセスできるものじゃないと意味がない。その始まりの考え方が違うという意味で、他のヨガ講座とは全然違うものなのかなと思います。
――苦しみを解き放つためのヨガで「自分にはできないはず」なんて苦しみを抱くのは本末転倒ですね。
石村:そうなんです。ヨガも、もともとはポーズもあぐらしかなかったんですよ。なぜあぐらかというと、あの姿勢だと呼吸もしやすくて瞑想がしやすいから。ポーズに人を当てはめるのではなく、人が必要だからポーズをとる。目的はヨガをすることそのものではなくて、ヨガの技術と知識を身につけて自由な体と元気な心、豊かな人生を手に入れることなんですよね
――実際にはどのような方々が受講されてきたのでしょうか?
石村:ヨガインストラクターを目指している方はもちろん、アスリートやアーティストの方が体幹作りを目的にされている方もいましたし、今まさに体に不調があるという方もいらっしゃいました。これまでも10代から70代まで年齢層も幅広かったのですが、今回東京での開講に向けて感じたのは、私も年齢を重ねたからなのか40代以上の方が多くなりましたね。
そのぐらいの年齢になると親の老いや死を身近に感じながら、自分自身にも訪れるかもしれない体の変化について何か対策ができないかと考えるようになるのかもしれません。この講座では体の構造を基礎から学ぶので、もし自分の体に不調が出た場合も自分で立て直すことができるという自信も身につくんですよね。漠然と老いや死を待つのではなく、そのときが訪れるまで怯えずに過ごすこともできるようになります。それだけでも心が穏やかになれますよね。
現在、受講するか迷われている方に個別相談も行なっているんですが、本当に様々な事情を抱えた方々が、この講座をきっかけに自分の人生をリスタートさせようとしています。もし興味があるけれど、「自分でもできるのかな?」と一歩踏み出す勇気が持てない方は、ぜひ遠慮なく相談していただきたいですね。
――1人ひとりにそこまで手厚くフォローをされているんですね。
石村:そうですね。解剖学、歴史、ポーズ……とそれぞれで学んで「はい、資格証!」というのは私のやりたい講座ではないので。プログラムも1ヶ月ごとに、3つのフェーズに分かれています。まずは9月に「見つける」。なぜ体が不調なのかという原因を知るフェーズですね。そして10月に「変わる」。本来のポジションがわかった上で改善していくことができます。そして、11月に「羽ばたく」。体が整い、心も元気になって新しい人生を作っていくという流れです。
日本、アメリカ、ドイツ、ミャンマー、シンガポール、イギリス、ハワイ……と今では世界各国でインストラクターとして活躍している生徒さんたちに加えて、身につけた技術と知識を使ってご自身のキャリアにプラスされる方も少なくありません。例えば、もともとお医者さんで体と心をあわせてケアできるようにリトリートセンターを創設された方。弁護士さんではDV被害者の人生を法で守りながらもまた元の状態に戻ってしまう現状を踏まえて、法律事務所にヨガスタジオを併設して心も守れるようにしていたり。また、ご自身のために学んだことをご両親やご友人にシェアしていらっしゃる方も多いですね。
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1人でも多くの人に、幸せに生きる術を伝えていきたい
――先生の最新著書『Life is Wellness 「健康な生き方」の科学』でも先生が向き合ってきた方々のエピソードが披露されていますね。
石村:きっと生徒さんたちが羽ばたく姿を見届けるのが私自身の幸せでもあるんだと思います。だから、20年もやってこられたんでしょうね。この仕事を続けていてわかったのは、幸福の定義は本当に人それぞれだということ。幸福学について学んでいたとき「100歳の自分をセレブレイトしよう」という授業があったんです。どんな人たちに囲まれて、どんな言葉をかけられていたいか。そんな100歳になった自分を想像すると、今の実生活とのギャップが見えてくる。
例えば、100歳になった自分が家族に囲まれて幸せに過ごしていることをイメージした人が、今は子どもに「忙しいから1人でテレビでも見てなさい」となかなか一緒に過ごす時間が大事にできていないと感じていたら? それはどんなに豊かな暮らしをしていても自分の幸せとは離れてしまっていますよね。目の前のやらなければならないことや何者にもなれていないといったプレッシャーに追われて、本当に自分にとって何が幸せなのかを見失いがちな時代です。なので、体を整えることで本来の自分にとって何が必要なのかを見極める心を取り戻すことも大事にしてもらいたいんです。
――今回の講座は対面レクチャーに加えてオンラインや動画でのレッスンも取り入れて、より無理なく受講できるようになっているそうですね。
石村:はい。どうしても東京に出てくるのが難しいという方もいらっしゃるということで、そのような体制を作りました。動画は『世界一受けたい授業』などを手掛けられてきたテレビ制作会社さんが作ってくださっているので、本当にクオリティの高い映像になっています。オンラインレッスンもアーカイブを残していくので、「1度聞いただけでは覚えられないかもしれない」「途中でついていけなくなっちゃうんじゃないか」と不安に思っている方も、何度も何度も見返すことができますのでご安心いただければと思っています。
――今秋からは桜美林大学の客員講師として、ウェルネス講義も担当されるとのこと。本当に進化が止まりませんね。
石村:教育機関で講義を持つというのは長年の夢でもありました。それは、これから社会に出て困難や挫折に直面するであろう学生さんたちこそ、誰かに頼ることなく自分自身で立て直す術が必要だと思っているからです。失敗したり、裏切られたり、大切な人を失ったり……と、人生で苦しい局面にぶつかったときに、呼吸を整えて心を穏やかにする方法を知っていれば、ある意味で自分で自分の人生をコントロールしていくことができる。きっとそれを知らないときよりも、人生を楽しく生きられると思うんですね。
――日本でも「ずっと自分を好きでいられる」ウェルネスの考え方がさらに広がっていきそうですね。
石村:そうなったら嬉しいですね。私はこれまでダンサー、女優、ヨガインストラクター、著者、ラジオパーソナリティ……そして9月からは大学の客員講師と、いろんな職業を経験してきましたけれど、振り返ってみるとは全部「伝える」という芯がずっとありました。それが好きなんだと思います。
これからも自分が体感して良かったことを惜しみなく伝えていきたい。その手段はいろいろと変わっていくかもしれません。かつて一家にひとつ必ずあったと言われる「家庭の医学書」みたいなものもまとめてたいという夢を持っています。AIとか取り入れたらできるのかしら(笑)?「体が痛い」とか「心が辛い」とか不調があったときに、それを開けば大丈夫……となるような。私の培ってきたものが全て集約されたものを、これからも様々な形で伝え続けていけたら嬉しいです。
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