上田竜也がデビュー小説にこめた"仲間"への想い 『この声が届くまで』トークイベントレポート
上田竜也が7月1日、小説家としてのデビュー作『この声が届くまで』(KADOKAWA、コルク)の出版記念トークイベントを東京・渋谷にあるHMV&BOOKS SHIBUYAにて開催した。
『この声が届くまで』は、上田が構想から10年の時を経て書き上げたバンド青春ストーリーだ。
主人公の対馬龍は、学生時代の仲間たちと組んだバンド「zion(シオン)」のボーカリスト。猪突猛進タイプの龍が率いるバンドゆえに、流行のスタイルに媚びることができず、不器用に活動を続けて10年が経っていた。なかなか世間の注目を集めることが出来ない日々に、そろそろ潮時だとメンバーの1人・マサが脱退を決意。どうしても、この仲間たちとテッペンを目指す夢を諦めきれない龍は、最後の望みをかけてメンバーのヒロト、誠一郎、毅志、そしてマネージャーの光、幼馴染の七海とともに一念発起することに。しかし、彼らの前には様々な困難が立ちはだかって……。
「思うことがたくさんありますね」と空を見つめる
『この声が届くまで』はフィクションの物語だ。そうはわかっていても、やはり上田の芸能生活とからめて読まずにはいられない。奇しくもこの日は、KAT-TUN解散後に初の公の場ということもあり、イベント会場に集まったファンは背筋を伸ばして上田の登場を待ちわびていたのが印象的だった。
司会進行を務めた小説の担当編集者に呼ばれ、ステージに現れた上田。白いシャツにデニム、黒い革靴を履き、そして左耳にはゴールドのピアスがきらりと光る洗練された装いに息を呑む。その艷やかな唇からどんな言葉が最初に飛び出すのだろうかと見守っていると、観客席に視線を移し「みんな姿勢良すぎない?」という言葉だった。
たくさんの危機を乗り越え、守り続けてきたグループ活動の終幕。そして初の小説発表という新たな章を迎えた今、緊張した面持ちで待ち構えていたファンたちも、変わらない上田を感じることができてホッとしたような笑いが起きた。
マスコミによるフォトセッション中も、相変わらずクールな表情を浮かべる上田。カメラマンから「嬉しそうに」というリクエストが寄せられると、逆に一瞬険しい視線を向けながらも、ぎこちなく口角を上げるという対応もまた上田らしく、客席からはクスクスと笑いがこぼれた。
フォトセッションが終わると、ステージ上ではしばしテーブルなどのセッティングタイムへ。スキマ時間にもファンとのふれあいを試みる上田は「みんな東京? 地方から来た人いるの?」と問いかける。すると、「北海道!? すごくない?」と遠方から駆けつけたファンを見つけて、思わず声が弾む。フォトセッション中よりも、よほど嬉しそうにしているのが微笑ましかった。
ステージの設営も整い、改めてトークイベントがスタート。6月27日に発売され、上田の心境はどうかと問われると「(構想から発売まで)長かったんでね。こうして発売されるとなんかね、すごく思うことがたくさんありますね。あの……長いようで早いってこのことだなって」と振り返る。この小説がどのように生まれたのか、直接上田の口から語られるとまた胸に迫るものがあった。