鳥山明、堀越耕平、辻真先らを輩出 アニメ映画祭「ANIAFF」で名古屋がさらなる“聖地”に
鳥山明に堀越耕平、辻真先らレジェンド作家を輩出してきた愛知県
ANIAFFでは、地元のファンが興味を持つようなプログラムも用意してくれるようだ。「ジブリパーク」や「世界コスプレサミット」に限らず、名古屋や愛知はアニメーションとの関わりを幾つも持っている。例えば作品の舞台として。つるまいかだの漫画を原作にした『メダリスト』は、名古屋市内にあるスケートリンクが舞台として登場する。
安藤正基の漫画が原作のアニメ『八十亀ちゃんかんさつにっき』は、名古屋における“常識”をこれでもかと内容に盛り込んで当地への関心を誘っている。東京にも進出している人気のとんかつ店「矢場とん」がスポンサーとなって制作されたアニメ『大須のぶーちゃん』に至っては、舞台となる大須が登場し、落合福嗣や小山茉美、櫻井孝宏といった名古屋に縁のある声優たちによる名古屋弁と共に地域を盛り上げている。
視線を広げれば、愛知の東三河にある豊橋市が雨森たきびのライトノベルを原作にした『負けヒロインが多すぎる!』の舞台となって来訪者を増やし、北隣の岐阜県にある岐阜市が米澤穂信の学園ミステリ『〈小市民〉シリーズ』、笠松町がオグリキャップの登場する漫画『ウマ娘 シンデレラグレイ』のアニメ化で”アニメ聖地化”している。こうしたムーブメントと連携することで、映画祭単体に留まらない関心の広がりを期待できる。
アニメと縁の深い漫画家の鳥山明も名古屋近郊の出身で、漫画もアニメも世界中で大人気となっている『僕のヒーローアカデミア』の堀越耕平も輩出してと、名古屋や愛知はトップクリエイターを大勢生み出している。『コードギアス 叛逆のルルーシュ』の谷口悟朗監督や『美少女戦士セーラームーン』の佐藤順一監督、『ペンギン・ハイウェイ』の石田祐康監督も地元出身者の列に並ぶ。『スター・ウォーズ』VisionsのVOL.3で「BLACK」を監督して、圧倒的なセンスを改めて世界に見せつけようとしている大平晋也、アニメーション映画祭と縁の深いアニメーション作家の山村浩二監督も出身者だ。
こうした先人たちにスポットを当てて、当地にクリエイティビティの機運が前々からあったことを改めて見せて、今のクリエイターたちを刺激するようなプログラムはあるのか。名古屋出身でテレビアニメの黎明期から脚本を書き続け、今なお現役の辻真先を記念する脚本家のための賞、やはり名古屋出身で『聖闘士星矢』『キューティーハニー』のキャラクターデザインを手がけた荒木伸吾にちなんだキャラクターデザイナーのための賞などが思い浮かぶ。
実際にどのようなプログラムが打ち出されてくるかはこれからの発表を待つことになるが、他のアニメーション映画祭との差別化も狙って斬新な企画が繰り出されてくれば、地下で滾っていた名古屋のアニメ熱も一気に吹き上がることだろう。12月の開催が今から待ち遠しい。