村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』から考える、映画『アフター・ザ・クエイク』の見どころ

 登場人物はみな、被災地から遠く離れた土地に住んでいるのが本書の肝となる。彼らは当然、直接地震の被害を被っていない。にもかかわらず、日常や自分の内面に何らかの形で変化や歪みが生じている。それは現実世界において、これまで多くの人が経験してきたことでもある。ドラマ『地震のあとで』は、そんな短篇集全体を貫く普遍性を強調する意味合いもあるだろう、あえて時代設定を1995年・2011年・2020年・2025年と4話別々に変更。過去そして未来に待ち受けているかもしれない恐ろしい事件や災害とどのように向き合うか、視聴者へ問いかけるつくりとなっている。

 さらに原作での魅力であり実写においても注目したいポイントが、主人公の行動に影響を与える個性豊かな導き手たちの存在である。たとえば、ドラマ版の第1話「UFOが釧路に降りる」で小村(岡田将生)の旅に同行し、〈でも、どこまで行っても自分からは逃げられないんじゃないかなあ〉などと予言めいた台詞を呟く、唐田えりか演じる「シマオ」の異世界の住人感。最終話「続・かえるくん、東京を救う」(原作のドラマオリジナル続編)で、のんが声だけを演じて表現する、かえるくんの蛙そのものの外見からは想像できない聡明さ。

 そのキャスティングでありキャラクターの見せ方に、原作の読者なら「そうきましたか」と、にやりとさせられるはず。彼らが映画版で、原作にもドラマにもなかった新たな展開へと導く重要な役割を担う可能性も、十分にあるはずだ。

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