士郎正宗は『攻殻機動隊』だけじゃないーー担当編集者・桂田剛司に聞く、『士郎正宗の世界展』の見どころ
全国を巡回したいですし、世界にも行ってみたい
――原稿で絵の魅力を楽しみ、単行本で漫画としての面白さを脚注も含めて味わうのが良さそうですね。展示では著名なクリエイターによるコラボレーションイラストも展示してあって、それぞれのクリエイターの"好き”が感じられて良かったです。
桂田:士郎さんのファンだということを知っている人にお声がけをして、描いていただいた感じですね。CLAMPさんは『ORION』を描いていましたが、皆さん死ぬほど士郎さんのファンなんです。同人誌まで持っていらっしゃるそうです。世代は士郎さんの方が少し上なんですが、同人誌時代から「士郎正宗」というすごい漫画家がいるということで興味を持っていらっしゃったようです。コラボイラストも最初に原稿をいただきました。こういう時に本気を出すことが、愛があることを示す上で必要だということを言っておられました。寺田克也さんはハリウッド版『ゴースト・イン・ザ・シェル』の時に描いてもらったことがあって、以前からお好きだったようで今回もふたつ返事で描いて戴けました。
――PlayStation版のゲームソフト『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』でアニメパートを監督した北久保弘之さんの絵もありました。『攻殻』のアニメでは原作に1番近いと言われている映像でした。
桂田:北久保さんのプレステ版の映像も好きですし、士郎さんといっしょに監督されたOVA『ブラックマジック M-66』も好きなんです。コラボイラストには『ORION』を描いていましたが、北久保さんに撮って戴けないかなと思ったりもしています。
――アニメですが、2026年に『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』としてサイエンスSARUが作ることが決まって、会場にも展示が出ていました。脚本が芥川賞作家でSF作家でもある円城塔さんで楽しみです。ルックも士郎さんの原作に近いところがありますね。
桂田:キャラクターデザインで総作画監督の半田修平さんが頑張っていただけているのだと思います。漫画とは違って常に動かす必要があるアニメで士郎さんのタッチに近づけていただいていることに、サイエンスSARUさんの本気度を感じます。
――映画やTVシリーズのアニメ版『攻殻』をまとめて紹介する展覧会も、2026年に開催が予定されています。そちらからも士郎さんへの注目が高まりそうですが、この展覧会自体も今後の展開が予定されているのでしょうか?
桂田:可能なら全国を巡回したいですし、世界にも行ってみたいです。士郎さんの作品は早くからダークホースコミックスが北米で本を作って売ってくれていました。だから北米にファンは多いですし、BD(バンドデシネ)の伝統があるフランスやヨーロッパでも人気です。ヨーロッパは緻密なものへのフェティシズムがあって美術への意識も高いので、ぜひ見てもらいたいと思っています。日本での展示もまだ海外にはそれほど知られていないので、情報が伝わって見に来て欲しいですね。
――これからのさらなる盛り上がりを期待しています。本日はありがとうございました。
■関連情報
士郎正宗の世界展 ~「攻殻機動隊」と創造の軌跡~
会期:2025年4月12日~8月17日
会場:世田谷文学館 2階展示室
住所:東京都世田谷区南烏山1-10-10
開館時間:10:00~18:00 ※展示室・ミュージアムショップへの入場は17:30まで
毎週月曜は休館(ただし月曜が祝日の場合は開館し、翌日休館)
料金:一般 1500円、65歳以上・大学・高校 1200円、小/中学生 450円、障害者手帳をお持ちの方(ただし、大学生以上は無料)750円
公式サイト:https://www.shirow-masamune-ex.jp/
公式SNS:https://x.com/shirow_ex
©Shirow Masamune/KODANSHA
©Shirow Masamune/SEISHINSHA
©Shirow Masamune/「士郎正宗の世界展」製作委員会
■書籍概要
『士郎正宗展公式原画集Shirow Masamune Artworks in the Shell』
A4変型判/ソフトカバー(帯あり)
ページ数:304ページ
定価:6,000円(税別)
発売日:2025年4月11日(金)