アニメ『メダリスト』大成功の理由は? 原作とは違う“リアリズム重視”の演技シーン

  傑作揃いだった2025年冬アニメのなかで、ひときわ注目を集めた作品といえば『メダリスト』だろう。4月3日に「Filmarks(フィルマークス)」が発表した「2025年冬アニメ 満足度ランキング」では、同作が3位に輝いている。

  なぜ大ヒットを記録したのか。原作漫画とアニメ版の違いも意識しつつ、その魅力を詳しく分析していこう。

  『メダリスト』は、つるまいかだが『月刊アフタヌーン』(講談社)で連載している作品。フィギュアスケートの世界に憧れる少女・結束いのりが、スケーターとしての夢に敗れた明浦路司と出会い、“メダリスト”になることを目指して二人三脚で成長していくという物語だ。

 その大きな魅力となっているのが、迫力のあるスケーティングの描写。いのりは司からレッスンを受けながら、着実に実力を伸ばしていくのだが、その演技シーンは情熱と執念に満ちており、優雅なイメージとはかけ離れた描写となっている。

 具体的にその表現方法を見てみると、構図や画力のほか、読者に躍動感を伝えるためのテクニックを駆使していることが分かる。最大の特徴はあえて線をブラッシュアップせず、作者の筆跡を残した作画にしていること。キャラクターの表情、そして身体の動きを示す流線、スケーティング時に生じる音を表現したオノマトペに至るまで、この手法が使われている。それによって、登場人物たちの内面から溢れ出す感情や気迫が見事に表現されているのだ。

 そもそも同作は感情表現が豊かな漫画だ。登場人物の感情が高ぶった時には、荒々しいタッチで輪郭を強調するなど、色々な技巧が見られる。スケーティングのシーンは、その極致と言えるだろう。

  それに対してアニメ版の『メダリスト』は、リアリズム路線の演出方針をとっているように見える。たとえば演技シーンでは、3DCGを活用した作画によって身体の動きをリアルに再現。指先からつま先に至るまでの素振り、さらに視線の動かし方なども細かく描かれており、本物の人間による演技に限りなく近づいている。

  そうしたリアルなスケート描写を支えているのが、モーションキャプチャーの導入だ。実際にフィギュアスケートの演技を行っている様子を取り込み、アニメへと落とし込んでいる。しかもその演技を担当しているのは、元オリンピック日本代表にして世界選手権で銅メダルを獲得した経歴もある鈴木明子だ。

  結果としてアニメ版では、原作では想像するしかなかった細かな演技の内容が分かるようになっており、原作ファンにとっても見ごたえのあるものとなっている。

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