今最も注目すべき脚本家・黒岩勉 漫画的要素の移植を試みたドラマ『全領域異常解決室』での新境地

『全領域異常解決室』の漫画的要素とは

 クライム・サスペンスを筆頭に、現代を舞台にしたリアル志向の物語が黒岩作品には多いのだが、一方で見逃せないのが『ONE PEICE』の劇場アニメや『キングダム』、『ゴールデンカムイ』といった人気漫画原作の劇場映画の脚本を彼が多数手掛けていることだ。

 こういった仕事は黒岩作品ではイレギュラーなものに感じるが、昨年放送されたオリジナルドラマ『全領域異常解決室』(フジテレビ系、以下『全決』)を観ていると『ONE PIECE』等の作品で試行錯誤してきた漫画的要素ですら、自作に取り込みつつあるように感じる。

 本作は神隠しや狐憑きといった超常現象を捜査し解決に導く内閣府直轄の捜査機関・全領域異常解決室(通称・全決)を舞台にしたドラマ。序盤は、超常現象はあくまで人間が偽装したものという、オカルトの皮を被ったミステリードラマとして展開されるが、やがて全決に所属する人物は全員、日本神話に名を連ねる神だと判明する。

 神々はそれぞれ、傷を治す力や水を操る力といった異能力を持っており、最終的に物語はヒルコという謎の神に日本神話の神々が戦いを挑むという異能力バトルへと変わっていく。ミステリーから神々の異能力バトルへとジャンル自体が変わってしまう本作は、展開が読めない異色のドラマとして昨年話題になったが、筆者には漫画やアニメで人気となっている異能力バトルのテイストをテレビドラマに移植していたように見えた。『全決』で試みた異能力バトルのテイストが、今後、黒岩のオリジナル作品にどのような形で波及していくのか注目である。

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