Yahoo!ニュースに配信された新聞社記事、名誉毀損でも「責任なし」ーー弁護士に聞く最高裁判決の影響と法改正の可能性
名誉毀損にあたる新聞社記事の「Yahoo!ニュース」への配信・掲載に際し、ヤフーの責任が問われるべきだとして、俳優・山本裕典さんが起こしていた裁判の上告審で、最高裁がこれを棄却した。発端となったのは東京スポーツ新聞社が報じた記事だが、配信先のYahoo!ニュースで拡散し、権利侵害を拡大されたという訴えに共感し、ヤフー側に「責任がない」とする判決に疑問を持つ人も少なくないようだ。
あらためて、今回の判決のポイントはどこにあったのか。小杉・吉田法律事務所の小杉俊介弁護士が語る。
「今回の判決は『プロバイダ責任制限法』(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)に基づいてます。同法では、他者の権利を侵害する情報を仲介して伝えたとしても、<発信者>でない場合は限定的な場合しか責任を負わないと定められており、ヤフーはその<発信者>に当たらないという判断です」
これが一般的なメディアであれば、編集という工程を経て掲載された記事について「発信者ではない」と判断されることはないだろう。しかし「Yahoo!ニュース」は契約したメディアが直接、記事を入稿するシステムになっており、日々配信される記事に対して基本的にヤフーの意思は介在しない。
「どこからどこまでが<発信者>と判断されるかは、判例も多くないため難しいところですが、最高裁が本件でプロバイダ責任制限法を適用し、本件のような場合にはヤフーは責任を負わない、としたのは大きいと思います」
2023年11月時点で、Yahoo!ニュースの契約社数は460社、契約媒体数は730媒体、記事本数は1日約7500本と発表されており、そのすべてをヤフー側が精査するというのは現実的ではない。今後もメディアが問題のある記事を配信し、Yahoo!ニュース等への掲載で大きく拡散する、という事例は起こり続けるのかーー。小杉弁護士は「そうした懸念を持つ人にとってネガティブなだけの判決ではない」と指摘する。
「今回の事件では、問題の記事がヤフー側が選定してリアルタイムのトップニュースとして掲載される『トピックス』、いわゆる“ヤフトピ”になっていませんでした。今回の判決の裏を返すと、プラットフォーム側の意思が何らかの形で介在すれば、他社が配信した記事でも<発信者>として責任を問える可能性が高いということが明確になりました。記事を選んでトップページに掲出することもそうですし、裁判でも言及されていた、アルゴリズムによる『おすすめ記事』で拡散するケースも含めて、プラットフォーム側が記事をピックアップする場合に、より慎重に精査する流れになるのではないでしょうか」
少なくとも、問題のありそうな記事をピックアップして拡散しない、という責任は広く認識されたと言えるかもしれないが、法律が変わることはあり得るのか。海外でもポータルサイトやSNSのプラットフォームについて同様の問題が議論されるなかで、小杉弁護士はアメリカの事例を挙げる。