ラストイヤーでM-1決勝進出、双子漫才師・ダイタクがSNSでバズ お笑い研究家が分析するコンビの魅力
大喜利的なワードゼロの漫才
器用そうに見えて、実は無骨な昭和の匂いのするコンビ。それは、ネタにも反映されている。中年になってボウリングの才能が開花した父親をイジり続ける「親父」、人違いされたエピソードから会話が飛躍していく「ドッペルゲンガー」など、家族や双子の設定を生かしたネタは多いが、定番のシステムに甘んじることのない多彩な漫才が特徴だ。この点について、前述の『千原ジュニアYouTube』の中で拓はこう語っている。
「ふたりとも信じられないぐらい大喜利が弱くて。(中略)大喜利的なワードのボケはもうゼロですね、僕らネタは。『双子がこんなシチュエーションになったら面白いよね』っていう外枠がボケてて、中はそのまま進むだけなんですよ。大喜利ができないのもあるし、ネタの構成上、大喜利的なボケを入れるとポーンってそこだけ浮いて、なんかおかしな感じになるので」
また、普段のライブでは基本的にネタ合わせをせず、“拓がしゃべり出しのネタ”だけ本番前に大が「あれやって」と伝えるのみ。長く漫才を続けていくために、ツカミを変えたりアドリブを入れたりして、楽しさや緊張感をキープしているという。このあたりからは、双子の漫才コンビ特有の関係性といぶし銀の魅力が感じられる。
今年、ラストイヤーでM-1の決勝進出を果たしたのはダイタクとトム・ブラウンの2組。トム・ブラウンが“掛け合いを無視したカオスな漫才コンビ”だとするなら、ダイタクは“双子をモチーフとした幅広いネタで魅了する職人”だ。どんな結果になろうとも、決勝で彼らのネタを見られるのが楽しみで仕方ない。