東海オンエア崩壊の危機から1年、10周年本は「完全復活」の試金石に? 期待されるファンの“答え合わせ”
人気YouTuberグループ・東海オンエアの10周年を記念するメモリアルブック『東海オンエア10th Anniversary Book天啓』(KADOKAWA)が、当初の刊行予定日から約一年、12月18日にいよいよ発売される。
発売延期のきっかけとなった騒動を考えると、グループが崩壊せず、1年で本来の姿を取り戻しつつあることに、あらためて安堵するファンも多いだろう。そして同書に対するファンの反応で、彼らが「完全復活を遂げたか」という答え合わせができるかもしれない。
東海オンエアをめぐる騒動と、『天啓』発売の意味
東海オンエアは、愛知県岡崎市を拠点として活動する6人組のYouTuberグループ。メンバーのタレント性の高さと企画力が話題を呼び、現在では700万人を超えるチャンネル登録者を抱えるトップYouTuberだ。お世辞にも品がいいとはいえない、体を張った動画がひとつの特徴だが、“迷惑系”とは違い、基本的にメンバー間でリスクを取り合った安心して笑える企画で人気を博してきた。地元岡崎市から「観光伝道師」に任命され、「提供:政府広報」のクレジットがついた動画も公開するなど“大人”からも愛されてきた彼らには、ファンを公言する有名人も多い。この数年、YouTuberがバブルと言えるような盛り上がりを見せたかと思えば、「オワコン化」が話題になるなど激しい浮き沈みのある業界のなかでも、飛び抜けた再生数でトップを走り続けてきた。
そんななか、チャンネルが10周年を迎えた2023年の10月に取り沙汰されたのが、東海オンエアの「主砲」とも呼ばれる人気メンバー・しばゆーと、その妻(現在は離婚)でインフルエンサーのあやなんによる、SNS上での激しい口論だった。しばゆーは東京と岡崎を行き来する生活を送っており、夫婦で運営する「しばなんチャンネル」と、東海オンエアとしての活動の両立について以前から摩擦があったなかで、口論はメンバーにも飛び火。それぞれに意見の食い違いもあって、グループと家庭の板挟みになったしばゆーが暴発し、各方面への暴言や不適切な動画などをXにポストする事態に至っていた。
そもそもメンバーのプライベートな問題であり、本人たちが冷静さを取り戻せば「大げんか」で済みそうなところだったが、人気グループに降って湧いた問題を面白がる人々も多く、騒動は瞬く間に拡大し、SNSのトレンドに上がり続けた。多くの企業案件も組まれていただろうグループの活動が休止したこと自体もそうだが、10周年を記念するイベントも中止になるなど、周囲の大人にも迷惑がかかりはじめ、大ごとになるにつれて「東海オンエア存続の危機」と捉えられるようになっていった。
そのなかで、当然のように『天啓』も発売延期になったわけだが、問題はしばゆーの一連のポストに、本書に掲載予定の写真などネタバレに近い内容が含まれていたことだ。グループ内での問題が解決したとして、版元との関係性の悪化や、最悪の場合発売中止になることも十分に考えられたなかで、1年越しに発売にこぎつけたことは、東海オンエアが危機を乗り越えたことを象徴するトピックと言えるかもしれない。
1年越しのメモリアルブックをファンはどう受け取るか
騒動のあった2023年10月からグループとして初となる長期間の活動休止状態にあった東海オンエアだが、2024年3月15日からメンバー5人で活動を再開し、10月12日の11周年記念動画でしばゆーも復帰。 活動再開以降も100万再生を下回った動画は一本もなく、目に見えた落ち込みがないままあたたかく迎え入れられている。しかし一方で、一定数冷めてしまったファンがいることも事実だ。以前ほど彼らの動画に熱中していないファンが、『天啓』を読んでどんな感想を持つかーーそれが本当に東海オンエアが完全復活したかどうかの答え合わせになるのではないか。
発売延期を経て、『天啓』の中身がどこまでどう変化するかはわからないが、そもそも予定されていた内容を見ると、ファンには嬉しいディープなものだった。これまでの活動歴や写真をまとめるだけの本ではなく、6人のメンバーが個人企画としてそれぞれがやりたいことをやり、全員参加の座談会のほか、意外と珍しい「ペア対談」も収録。動画でも随所で存在感を示してきた「母たち」のお茶会や、田中圭一作画による「まんがでわかる東海オンエアものがたり」も収録される。その多くが、騒動以前に制作されたものであり、ファンが違和感なく楽しめるなら、騒動前後の活動がシームレスにつながった「完全復活」と言っていいだろう。逆に、彼らの姿に白々しさを感じてしまうファンが少なくないようであれば、まだ時間がかかるのかもしれない。
発売延期前から帯に書かれていた「夢も目標も要らない。この6人で、この場所で、いつまでもただ遊ぼう」という言葉が、いまもきちんとファンに刺さるのか。あるいは騒動を経て、より強い誓いとして心に響くのか。いち視聴者として筆者も本書を手に取り、答え合わせをしたい。