埼京線、なぜ遅延・満員電車が改善しない? 歴史・ダイヤ・沿線人口から考える

■意外に歴史が浅いJR埼京線

埼京線をはじめ、京浜東北線、宇都宮線、高崎線、川越線、東北新幹線、上越新幹線、北陸新幹線といった多くの電車が乗り入れる大宮駅。東日本の玄関口として発展を遂げている。(photolibrary)

  JR埼京線は埼玉県から東京都内へ通勤する人々にとって、なくてはならない路線の一つである。列車が池袋駅、新宿駅、渋谷駅などの巨大ターミナルを経由することから、首都圏の鉄道路線のなかでも屈指の混雑度で有名であり、1日の利用者は約70万人ともいわれるため、朝のラッシュ時には乗客がすし詰め状態になることが多い。

 埼京線の歴史は意外に浅く、今から約39年前、1985年に開業した。沿線の住民に対し、東北・上越新幹線の建設の見返りとして建設されたためである。当時、新幹線の騒音は公害問題の一つに挙げられており、通過するだけの地域にはメリットがなく、建設反対の運動も怒った。そこで、沿線の利便性を高めるために埼京線の建設が決まったのである。

 埼京線が完成したことで、首都圏の通勤事情は飛躍的に改善された。当初からJR川越線を電化したうえで直通運転が行われ、当初は池袋駅が終点だった。翌年には新宿駅まで延伸。そして2002年には大崎駅まで延伸されて、同時にりんかい線との直通運転が始まり、2019年は相鉄線にも直通。首都圏の路線ネットワークとして欠かせない存在になっている。

■埼京線、なぜ遅延が起こるのか

 そんな埼京線が遅延したり、止まったりすると、なにぶん利用者が多いため大混乱に陥る。遅延の理由は様々なケースがあるが、埼京線が湘南新宿ラインと一部の線路を共用して運行されている影響も大きい。湘南新宿ラインが止まると、埼京線が巻き添えを食って遅れてしまうのである。もちろんその逆パターンもあるのだが。

 また、記者が実際に遭遇した例があるが、痴漢が発生したせいで列車が遅れることもあるようだ。埼京線は国内有数の痴漢発生率という不名誉な称号を得ているが、今年5月27日は痴漢を行った男が線路内に立ち入って逃亡を図ろうとしたため、列車が止まってしまったことがある。犯人は約3ヶ月後に逮捕された。

 直通する川越線の問題もある。川越線は1985年に大宮駅~日進駅間が複線化されたが、それ以外は単線なのである。そのため、途中駅で上下列車の交換をする必要がある。さらに、途中に荒川を渡るルートのため、強風や大雨で遅延が発生しやすい。川越線は単線にも関わらず国内有数の輸送量を誇っているため、複線化はたびたび議論になるが、現状では進展が見られない。

 加えてJR東日本の「路線別利用状況」によれば、埼京線の平均通過人員は開通当初の1987年度では赤羽線(池袋~赤羽間)で約83,000人、東北本線支線(赤羽~大宮間)で約60,000人だったが、2022年度:赤羽線で約120,000人、東北本線支線で約100,000人と増加している。それに2024年の埼京線沿線の公示地価は、平均で186万5,805円/m²(坪単価約616万7,950円/坪)となり、前年から6.33%の上昇を示しているように、人口増加や定住者は増加傾向だ。これからも沿線の人口が増えていくとなるとさらに混雑は増していくだろう。


  様々な課題を抱える埼京線だが、今後、羽田空港アクセス線が建設された際は、羽田空港の駅に乗り入れる計画もある。実現すれば沿線の利便性が高まり、沿線人口の増加や、駅前の活性化が図られるとみられる。現時点で東京ビッグサイトや観光地川越へのアクセス路線としても機能している埼京線。今後、重要度がますます高まっていくことは間違いなさそうである。

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