矢樹純はミステリーだけじゃない! 新刊『血腐れ』『撮ってはいけない家』で示した、ホラー作家としての力量

 物語は、次から次へと新たな謎が提示され、裕季と一緒に読者も翻弄されることになる。一連の騒動は複雑に絡み合っており、真相はなかなか見えない。それでも読んでいてイライラしないのは、謎の一端が適度に解明されるからだろう。祐季と阿南が探偵役といっていいが、彼らの到達する真実は、現実的なものとスーパーナチュラルなものが入り混じっている。そこに本書の、たまらない面白さがあるのだ。

 ところで作者はnoteで本書のことを〝伏線回収ホラー〟と呼んでいる。最初の方のなにげない場面を始め、たしかにあちこちに伏線が張られ、鮮やかに回収されている。終盤には、本書のタイトルまで伏線回収されているのだから天晴だ。しかもその後に、ラストの一撃となる恐怖が控えていた。この作品も、ホラーとミステリーの融合が素晴らしい。両作品とも、ホラーファンとミステリーファンにお薦めできる逸品なのだ。

関連記事