『あしたのジョー』ちばてつや、 10月25日文化勲章決定 漫画家としては初の栄誉 漫画界から祝福の声続く

■漫画界から初の栄誉

漫画史に残る『あしたのジョー』の名場面。ジョーのみを白くプリントしたハンカチも登場などグッズ化もされている。©高森朝雄・ちばてつや/講談社

  10月25日、政府は2024年度の文化勲章に『あしたのジョー』などで知られる漫画家・ちばてつや氏(85)ら7人に贈ると発表した。授与式は11月3日に皇居で行われる。なかでも、ちば氏の受章は漫画家初となる快挙。ちば氏は25日に自身のブログ『ぐずてつ日記』を更新し、「この度は、はからずも、文化勲章という、大変名誉な受章のお知らせがありました」と、報告した。

  ちば氏は、「私が七十年近く、描き続けてきた漫画、コミック。今でこそ世間の皆さんが、年齢を問わず、当たり前のように楽しんで、読んでくださっていますが、考えてみると漫画は、昔はほぼ、子どもだけが楽しむものでした」と振り返り、「われわれの先輩漫画家や編集者さんたちの奮闘努力、そして現在も頑張っている多くの漫画家仲間たちが、女性誌、青年誌、成人誌、等々ジャンルを大きく広げ、深め、育て上げてくれました」と語った。

  そして、「今回は、その全ての漫画家たちの創作活動に対して、ご評価をいただいたものと、とても嬉しく思っております」「このような勲章を、漫画界を代表してお預かりすることには、大変な責任を感じているところですが、今後、さらに日本の漫画界、コミック界が世界中の人々に愛される『日本文化』の一つとして、これからも、大きく発展していくための一里塚として、謹んで承ろうと思います」と、思いをつづった。

■漫画家からも祝福の言葉

  今回のちば氏の文化勲章受章は、昨年の里中満智子氏の文化功労者選出に続く漫画界からの栄誉であり、漫画の評価が高まっていることを象徴する出来事といえそうだ。また、ちば氏は『あしたのジョー』『あした天気になあれ』『のたり松太郎』を筆頭に数々の名作を生み出す傍ら、漫画表現の自由を守るための運動や漫画原画の保存に関する活動を推進してきたほか、現在も日本漫画家協会会長を務めるなど漫画界に多大な貢献をしてきたことも重要である。

  ちば氏の受章を受けて、漫画界からも祝福の声が上がった。島本和彦氏はXを更新し、「ちばてつや先生‼︎ 文化勲章おめでとうございます‼︎‼︎ 凄い‼︎‼︎」とコメント、三浦みつる氏は「漫画界初 嬉しい!」と称賛した。ながやす巧氏の妻・永安福子氏も、「ちばてつや先生 文化勲章御受章 おめでとうございます!」と祝福。ながやす氏はリアルサウンドブックのインタビューで、ちば氏に憧れて漫画家を志したと語っていた。

  文化勲章受章者は、原則として文化功労者の中から選ばれる。漫画家の文化功労者は、ちばてつや氏のほか、横山隆一氏、水木しげる氏、萩尾望都氏、大島弓子氏、里中満智子氏などがいる。ただ、手塚治虫氏、石ノ森章太郎氏、藤子・F・不二雄氏などは文化功労者に選ばれていない。3氏は60~62歳という若さで亡くなっていることや、平成の初め頃という漫画の評価が今ほど確立されていない時期に亡くなったことも影響していると思われる。

 さて、ちば氏はブログで、「漫画は漫画家だけで作っているのではなく、パートナーである原作者や出版社、編集者の方々。読者の手元に書籍を届けてくれる全国の書店さんをはじめ、ご苦労をおかけした製版、印刷、出版業界、全ての関係者の皆さんにも、心から、感謝とお礼を申しあげたいと思います」とコメントした。漫画界の未来のためにも、今回のちば氏の受章は極めて大きな意義があるといえる。

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