【第61回文藝賞】待川匙「光のそこで白くねむる」松田いりの「ハイパーたいくつ」二作に決定

 1962年の創設以来、多くの新人作家を輩出してきた「文藝賞」(主催:河出書房新社)の選考会が8月21日にフォレストテラス明治神宮にて執りおこなわれ、選考委員を務める小川哲、角田光代氏、町田康、村田沙耶香による選考の結果、第61回文藝賞受賞作に待川匙『光のそこで白くねむる』、松田いりの『ハイパーたいくつ』の二作品が決定した。

 受賞作と受賞の言葉、選考委員による選評・選考経過は、10月7日(月)発売の「文藝」冬季号に掲載される。贈呈式は11月中旬に明治記念館にて開催し、受賞者には正賞として記念品、副賞として50万円が贈られる。

■受賞作
「光のそこで白くねむる」(400字×150枚)
待川 匙(まちかわ・さじ)/1993年、徳島県生まれ、滋賀県育ち。現在、北海道在住。31歳。

「わたしたちの生まれるまえ、この土地には恐竜がいた。わたしは、その話をあなたとしたい」
あなたの墓参りのため十年ぶりに故郷をおとずれた「わたし」。山あいを走る電車に乗り、坂をのぼり、過去の時間をたゆたう中で、ふと「キイちゃん」の声が語りかけてきて――。崖で隔てられた彼岸と此岸の往還により引き出される思いもよらない記憶。時の流れのゆらぎを漂う静謐な戦慄が、新感覚の詩情で語られる。

「ハイパーたいくつ」(400字×129枚)
松田 いりの(まつだ・いりの)/1991年、静岡県生まれ。現在、東京都在住。32歳。

「もうちょっと頑張ってくれなくちゃあ、まともな成果とは無縁の君がどうしてまだ会社にいるんだって話にもなるじゃないか。溺れてこそのペンペンさ」
迷惑系給金泥棒として職場で疎まれている私は、ジャケット姿が無様なペンギンに似ていることから「ペンペン」と呼ばれている。
八方塞がりで退屈な毎日が限界を迎えたとき、壊れた私の壊れた言葉が、壊れた風景を呼び起こす。リリカル系日常破壊小説!

■文藝賞とは
河出書房新社の季刊文芸誌「文藝」を母体とし、1962年から始まった文学の新人賞。これまで、第1回受賞の高橋和巳をはじめ、田中康夫、山田詠美、長野まゆみ、綿矢りさ、羽田圭介、山崎ナオコーラ、磯﨑憲一郎、町屋良平、若竹千佐子、宇佐見りん、遠野遥など、文学シーンに常に新たな才能を送り込んできた。

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