「steady.」「JELLY」……女性ファッション誌、休刊相次ぐ 雑誌編集者「定期購読減少も大きい」打開策は?

■女性ファッション誌、冬の時代か

photo:jonas jacobsson(unsplash)

  今年に入り、女性ファッション誌の休刊が相次いでいる。まず、文友舎が発行していた女性誌「JELLY」が、2月17日発売の4月号をもって休刊した。また、宝島社は「steady.」を8月7日発売の9月号で休刊した。

惜しくも休刊となった「steady.」(宝島社)と「JELLY」(文友舎)

  ちなみに、「JELLY」も「steady.」も女性誌全盛期の2006年に創刊された雑誌であった。「steady.」は2010年には約70万部に到達していた時期もあったが、書店減少や雑誌文化の急速な環境変化に伴い、両誌とも約18年の歴史に幕を下ろすこととなった。

  残る女性ファッション誌も部数減に陥っている。日本雑誌協会が8月7日に公表した、2024年4月〜2024年6月の3ヶ月毎の平均印刷部数によると、「CanCam」が約6万8000部、「ViVi」が約6万5333部、「non・no」が約6万3500部となっており、かつて数十万部を誇った雑誌が軒並み6万部台まで落ち込んでいる。

 「女性ファッション誌の相次ぐ休刊は、厳しい言い方ですが必然な出来事だと思います。広告の出稿が大きく減っていますし、実売部数はほとんどの雑誌が落ち込んでいます」と話すのは、大手出版社の雑誌編集者である。

 「女性ファッション誌は美容室や病院の待合室に置かれている定番でしたが、今や美容室ではタブレットを用意して雑誌を読ませるスタイルが増えているので、雑誌そのものの定期購読が減ってきています。病院の待合室では今でも雑誌が置かれているところもありますが、みんな自分のスマホに夢中。若い世代がファッション情報を入手するのは、雑誌よりもSNSなどのネットの方が影響力を増してきていますからね。昔は雑誌が折れるほどに熱心に読んだ跡が見受けられたのものですが、今では誰も読んでいないのか、綺麗なまま棚に置かれているのは見るのは寂しい気さえしてきますが」

■雑誌の市場は急速に落ち込む

  実際、かつて女性ファッション誌の熱心な読者だった10~30代のファッション情報は、TikTokやInstagramなどのSNSが完全に牽引している。そうした影響を受け、女性ファッションは明らかに広告数が減っており、ページ数も減少傾向だ。

  かつて出版社にとって女性ファッション誌はドル箱中のドル箱であった。「ある雑誌は、広告が入りすぎるので姉妹誌を創刊したくらい」「1冊も売れなくても広告代だけでペイするといわれた時代があった」とさきの編集者が語るほどの売り上げを誇っていた女性ファッション誌も、急激な時代の変化に苦しんでいるようだ。

  雑誌の市場規模の縮小と部数の落ち込みは深刻になっている。出版業界の調査研究機関である(公社)全国出版協会・出版科学研究所が『季刊 出版指標』2024年夏号に発表したデータによると、2024 年上半期(1~6月期)出版市場において、紙の雑誌の市場は7.8%減の2025億円となった。

  取材費が嵩みがちなファッション誌は、広告が入らないと収益化が難しい状況にある。とはいえ広告頼みの誌面作りはもはや困難になりつつあるし、SNS全盛の時代において、ファッション雑誌の影響力は相対的に低くなってきているといえるだろう。

  定期購読者数は44万人を超え(※日本ABC協会発行社レポート(2023年7~12月)、全ての月刊誌で部数1位となった『ハルメク』のようにターゲットを大人女性に絞って成功をしている例もある。厳しい状況は今後も続くことは予想されるが、雑誌には編集者が取捨選択し整理されたより良い情報が分かりやすくまとめられているのは強みだ。かつてファッション誌がトレンドを作り出す状況は、日本でも当たり前のようにあった。多くの情報が氾濫する時代において、その編集力というのは、現在でも非常に有利に働く。良い情報、質の高い情報というのはいつの時代にも色褪せることはない。生き残りをかけた女性ファッション誌はどのようにして情報を編集し発信して行くのか。

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