「書店にない」ラノベ人気作『涼宮ハルヒの憂鬱』絶版騒動ーー公式反応でファン安堵も看過できない理由は?

■『涼宮ハルヒの憂鬱』が購入できない?

谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』(KADOKAWA)

 2003年に『涼宮ハルヒの憂鬱』が発売されて以来ベストセラーとなっている『涼宮ハルヒ』シリーズ。2000年代のライトノベルの金字塔であるだけでなく、京都アニメーションによってアニメ化されて大ヒット。京アニの評価を決定づけた、この時代を象徴するアニメのひとつとされている。

  そんな『涼宮ハルヒ』シリーズの公式Xが、7月16日に行ったポストがファンの間で話題になっている。それは以下のようなものだ。

「涼宮ハルヒ」シリーズはいずれも紙の本での販売を継続しており、絶版にはなっておりません!

今でも少しずつ重版を重ねて書店さんに置いていただいています。安心してお楽しみください!

もちろん全巻電子書籍も発売中です。

角川スニーカー文庫版も、角川文庫版も、どちらも発売中です。気に入った装丁でぜひお手に取ってください!

 えっ、『涼宮ハルヒ』シリーズに絶版疑惑が出ているのか……と驚いたファンもいたようだが、事の発端となったのは、ある小説家の「絶版かは謎ですがスニーカー文庫版の『涼宮ハルヒの憂鬱』すら新品は入手困難だった時は震えました」というポストであった。公式が絶版になっていないとアナウンスして、この騒動は決着した。胸をなでおろしたファンも多かったはずだ。

■絶版にはなっていないが、書店にない?

 その一方で、『涼宮ハルヒ』シリーズは絶版にこそなっていないものの、「書店に並んでいない」という意見も見られた。実際、記者が近所のチェーンの書店を覗いてみたところ、店頭にはシリーズ第1作『涼宮ハルヒの憂鬱』の在庫がなかった。別のチェーンの書店に行ったら見つかったものの、京アニのアニメが盛り上がりまくっていた頃はシリーズ全巻が常備されている書店が普通にあっただけに、寂しい思いを抱いてしまう。

  以前、書店員に話を聞いたことがあるが、こうした背景にはライトノベルの市場が縮小していることが影響しているようだ。ラノベ作品の飽和状態や書店減少も関係しているようで、かつてのラノベのベストセラーが棚からなくなっているという。『涼宮ハルヒの憂鬱』に限ったことではなく、同時期のヒット作『ゼロの使い魔』や『灼眼のシャナ』なども、並んでいない書店が目立つ。

  紙の本はAmazonで入手でき、電子書籍で手軽に買うことができるとはいうものの、2000年代に日本の出版文化を牽引したライトノベルが姿を消しつつあるのは残念だ。『涼宮ハルヒの憂鬱』はライトノベルブームを確立した歴史的な作品であるだけに、ぜひ若い世代にも読んでもらいたい。夏目漱石の『坊っちゃん』や芥川龍之介の『杜子春』などと一緒に、古典的な作品として常備してもらいたいものだが、どうだろうか。

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