倉田真由美、亡き夫・叶井俊太郎さんへの想い「亡くなる前日の食事はファミチキでした」

■看取ることができてよかった

――普段通り過ごしていたからこそ、最後を看取ることができたわけですね。

倉田:もし、入院していたら最期を看取れなかったでしょうね。亡くなったのは夜中だったし、「旦那さんが亡くなった」と病院から伝えられる形で、死を知ったかもしれない。もっとも、はじめは夫も私も自宅で死ぬのは嫌だと思っていました。痛いときにすぐ処置してくれるから、病院の方が安心だと思っていたんですよ。けれども、22年に夫が長く入院をしたとき、治療中に全身に激痛が走ったそうです。相当辛かったのでしょう。退院後は「絶対に家で死ぬのがいい」と言い出したんです。

――その思いを受けて、倉田さんの考えも変わったわけですね。

倉田:もし意識がなくなり、点滴とおむつ交換をするだけの状態だったら、考えは違ったかもしれない。けれども、夫は話せるし、「ガリガリ君を食べたい」とか言ってくるんですよ。毎日できていることが病院だとできなくなるわけでしょう。それは怖いと思いましたし、この人を目の届かないところにおくのは嫌だと思いました。

――かくして、最期まで自宅で過ごすことになったわけですね。

倉田:そのおかげで、結果的に看取れたのはよかったと思います。でも、亡くなる瞬間を目の当たりにするわけですから、看取るのは精神的にもしんどいと思いました。私は周りに決してすすめません。荷が重いと思う人はいても当然だし、その感覚は人それぞれでいい。私の意見はあくまでも参考にしていただければと思います。

■食べ物のことが心残り?

――倉田さんが叶井さんと過ごした日々は濃厚だったと思いますが、振り返って、これをしておけばよかったなという後悔はありますか。

倉田:先ほどファミチキの話をしましたが、一番は食べ物のことでしょうかね。夫はジャンクフードが好きで、癌が進行して量が食べられなくなっても、前々日はマクドナルドのフライドポテトとチーズバーガー、ナゲットを食べているんです。胃と小腸を繋いでからも、おなかが痛くなるとわかっていてもカップ麺を食べるんですよね。亡くなる1ヶ月前にもカップ麺を食べて、私が「二度と食べないで!」と叱ったことがありました。これは、強く言い過ぎたなと後悔しています。

――叶井さんのジャンクフードへの執着は凄いですね。

倉田:夫は腹水を抜き始めてから体が弱るスピードが速まっていきました。夫の腹水の成分を調べたら、がん細胞がなく、抜く必要がないという意見もあったんです。ただ、2~3リットルくらい抜けば少し楽になるし、何より食べることができるという理由で毎週抜いていたのですが、私は本音では抜いてほしくなかった。抜いた分、体が無理をして水分を作っているわけですからね。特に、腹水を抜いた翌日、管の穴から水漏れしていた日があって、そのときは本当に弱ってしまいましたから。

――末期がんになると、一つ一つの治療が体調に大きく影響しますからね。

倉田:ただ、おおむね本人がやりたいようにやったので、よかったと思います。手術や抗がん剤治療を受けるかどうか、これはがん治療の大きな選択です。夫は一切やらないと決めて、私もそうすべきと決めた。大きな決断でしたが、夫が選んだことですから、私はその判断は正しかったと思っています。

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