解読『ジョジョの奇妙な冒険』Vol.4

【解読『ジョジョの奇妙な冒険』】本日実写ドラマ最新作放送、「岸辺露伴」とは何者か――稀代のトリックスターを分析

  今回は、『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦)のスピンオフ作品『岸辺露伴は動かない』と、その主人公「岸辺露伴」について考えてみたいと思う。なお、本日5月10日は実写ドラマ『岸辺露伴は動かない』最新作「密漁海岸」が地上波初放送日だ。

第一回「“ジョジョ”という名の時代を越えたヒーローたちの誕生」
第二回「スタンドという“発明”ーー他に類を見ない表現と概念を考察」
第三回「ツェペリ、リサリサ、ブチャラティ……物語を動かす「メンター」たち」

 岸辺露伴とは、『ジョジョの奇妙な冒険』第4部に出てくる主要キャラの1人であり、職業は漫画家。「ヘブンズ・ドアー」というスタンド(異能)を使い、人を「本」に変え、その記憶を読み取ったり、行動を操ったりすることができる。

  『岸辺露伴は動かない』は、タイトル通り、そんな彼を主人公にしたスピンオフの短編シリーズなのだが、同作に出てくる露伴は「ジョジョ」第4部の露伴とはパラレルな関係にあるようだ(実際、細かい部分でのキャラクター設定はいろいろと異なっている)。また、現在連載中の第9部『The JOJOLands』にも岸辺露伴は登場しているが、そちらも第4部とは異なる世界線上のキャラクターである。

 とはいえ、岸辺露伴は岸辺露伴である。「面白い漫画」を描くための取材には命を賭け、何があっても自らが正しいと思う信念を貫き通す。それはどんなパラレルな世界にいようとも変わらない、彼の「キャラクター(個性)」だといえるだろう。

トリックスターが世界をかき乱す

 ところで、漫画に限らず、「面白い物語」には、たいてい「トリックスター」と呼ばれるキャラクターが登場するものだ。

 トリックスターとは、善と悪の両義性を持ち、既成概念を破壊して新たな価値観を生み出す存在のことだが(有名なところでは、ヘルメス、プロメテウス、孫悟空、哪吒、スサノオなど)、常識にとらわれない“彼ら”が世界を混乱させることで、物語はより面白くなるのである。

 そういう意味では、岸辺露伴もまた、神出鬼没なトリックスターの部類に入るキャラクターだといえるだろう(「ジョジョ」本編の主人公では、第5部のジョルノ・ジョバァーナや、第9部のジョディオ・ジョースターあたりが、トリックスターの要素を兼ね備えたヒーローである)。

 思えば、「ジョジョ」第4部で初めて登場した時の岸辺露伴は、主要キャラの1人、広瀬康一を危機に陥れた“悪役”だった。また、一応は正義の側についた後も、最後まで主人公の東方仗助とは反りが合わない間柄として描かれている。

 つまり、こうした“敵か味方かわからない”立ち位置こそが岸辺露伴の最大の魅力であり、それは、何ものにも縛られることのない彼の特性を表わしてもいるのだ。

 実際、読み手は、岸辺露伴の“次の一手”を、なかなか予測しづらいのではないだろうか。だから、読者は彼の“動き”から常に目が離せないのである(たとえば、有名な「だが断る」のセリフが感動的なのは、あの局面で彼が絶対にいいそうにないセリフだからだ)。

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