なぜ? 女児向け本、社会人から大反響で10万部突破 編集者が明かす、意外なヒットの理由
押し付けにならず、自らが考えられる誌面に
――制作するうえで意識したポイントはありますか?
老沼:なるべく上から目線にならないようにという点と、答えを与えすぎないようにという点です。偏った思考の押し付けにならないよう、読者自らも考えられるようにしたいなと。答えを提示する場合は、どうしてそうなるのかという理由を明確に入れるようにしています。自分自身の子ども時代を振り返ったとき、強制されても「なんで?」と思った記憶があって。疑問にしっかり答えられる内容を意識しました。
――押し付けられた価値観を受け入れにくいのは、大人も同じかもしれません。他、構成でこだわった点は。
老沼:抑揚や緩急を大切にして、じっくり読んでもらう部分とサラッと読んでもらう部分を作り、最後まで飽きずに読んでもらう工夫をしました。女の子の少し背伸びしたい気持ちにも応えられるよう、女性誌などを参考にして、ものの言い回しをあえて簡単にしすぎないようにもしています。
また、漫画部分を双葉陽先生に引き受けていただけたことも大きかったです。編集部側でプロットのようなものを考えるのですが、細かい流れに関しては双葉先生が全部考えてくださって。感度の高いマンガ家さんがわかりやすく描くという点は、多くの人の手に取ってもらうきっかけになったと思います。
コロナ禍の影響で「人間関係」への不安が加速
――ムダ毛や生理など体の悩みから、言葉や仕草のマナー、友達関係やSNSの使い方まで踏み込んだ内容も印象的でした。項目やお悩みはどのようにピックアップしたのですか?
老沼:20代の若手から子育てがひと段落した50代まで、制作スタッフ内で「どんなことで悩んでいたか」「子どもの頃、どんなことを知っておきたかったか」を話し合いました。それに基づいて女子小学生にアンケートを取り、今の小学生がどんなことで悩んでいるのか、何を知りたいと思っているのかを調査したんです。結果として、一番多かった悩みは人間関係でしたね。友達関係の悩みが多く、時代を経ても、悩んでいることに変わりはないんだなと感じました。
――学校を卒業しても人間関係の構築からは逃れないですからね。
老沼:あれから約3年が経ちましたが、今回反響をいただいているのはコロナ禍が関係しているのかなとも感じています。大学時代はリモート授業がほとんどで、人付き合いがなかなかなく、そのまま社会人になってしまった人も多いと思います。コミュニケーション力に不安を持つ20代からコメントをもらうこともありました。
――意外な層からの支持もあるのですね。
老沼:今回のバズりに関しては、私たちの想定外の層で起こりました。実は親世代だけではなく、20~40代の独身男性が買ってくれていて。さらに、より心の問題に寄り添った同シリーズの『こころのルール』は20~30代の男性購入者の比率が『かわいいのルール』より若干多くなっています。
部下とのコミュニケーションに悩んだり、もしかしたら婚活などに利用している方もいらっしゃるかもしれません。親世代は書籍で購入するのに対し、その方たちは電子書籍で購入いただいているのが特徴ですね。書店員さんからも、「書店でもビジネス書の棚に置いた方がいいのでは?」なんていうご意見もありました。
「ハピかわ」シリーズはどの本も、『かわいいのルール』に通じる、自分の内面と向き合い、自分のことを考えるきっかけになるキーワードが入っています。ぜひ世代や性別を限定せず、自分に自信を持てるきっかけづくりのお手伝いができたらうれしいです。