イラストレーター・漫画家を狙う詐欺がSNSで頻発……警鐘鳴らす洋介犬に聞く、巧妙な手口と騙されない対策
■詐欺師がターゲットにする層は
――詐欺師がターゲットにしているのは、どのような層なのでしょうか。
洋介犬:「絵を描く副業がしたい」「漫画で有名になりたいが、その方法がわからない」という人がターゲットになることが多いようです。実は、漫画家は横のつながりが希薄なことがあり、情報共有ができない孤立した志望者も少なくないので、狙われやすい感じがします。
――詐欺が増えることによって、漫画界に与える悪影響もありそうです。
洋介犬:まず純粋な金銭被害はもとより、被害者が加害者に転じるネズミ講化、カルトへの誘導、そして「本当に真摯でまっとうなイラスト・漫画レッスン」までもが胡散臭く見られるという影響があります。これは一見「騙される奴が悪い」だけのようでいて、じわじわ広がる病巣になり得ると思います。
――こうしたニッチなジャンルの詐欺が出てきた背景には、どのようなものが考えられますか。
洋介犬:漫画のマネタイズの方法が多様になったことが大きいと思います。一昔前の漫画家と言えば、「雑誌に載って、連載して、単行本化して……」というのが主流でしたが、漫画が市民権を得て、広告効果の増大によって企業LP(ランディングページ)や広告などでの活用、出版社が関係しないブログでの収益やインディーズ出版、SNS漫画の勃興などの広がりをもったことで、「潜在的漫画家人口」が激増したことが関係していると推察されます。
――確かに、イラスト系のYouTubeなども人気が高まっていますし、SNSを見ると漫画家を志望する人も多い印象を受けます。
洋介犬:潜在的漫画家人口の増加は、業界にとっては好ましいことです。反面、こういう詐欺のターゲットとしても条件を満たす人口になったのは、由々しき問題だと思います。
■対策はどうすればいいのか
――詐欺師に引っかからないためには、どのような対策をとるべきでしょうか。
洋介犬:まず、使用されている手法は実は従来からの古臭いものなので、詐欺に対しての知識を持つことが第一です。そして、「すぐに月収30万円」などの大きな数字に惑わされないことが大事だと思います。信頼できる作家さんや周囲に相談をしてみることも大事ですね。
――先ほどのお話にもありましたが、洋介犬先生は、漫画家のメンタルケアなどの相談窓口を開設しようと奔走していますよね。
洋介犬:僕がギルド(互助サークル)を作って、基礎的な業界知識の共有と相談窓口を用意したいと思っているのも、そういった様々な悩みごとをフォローしたいという理由があります。
――それにしても、洋介犬先生がこうした情報発信を行うのはすべてボランティア仕事なのだそうですね。連載を多数抱えるなかで、こうした取り組みを続けるのはなぜですか。
洋介犬:ただ単に義侠心と言いますか、光栄なことに日本漫画家協会の参与という身に余る役職をいただいたので、それに恥じない行動を心がけているうちにこうなった感があります。ただ、これは従来であれば「先輩としての責務」としてあってもよかったことであり、さほど特殊なことをしている気はありません。結果として、問題が解決した未来さえあればいいので、僕の名前が残らなくても構わないと思っています。