OKAMOTO’Sオカモトショウ連載『月刊オカモトショウ』

オカモトショウが選ぶ、いま注目のマンガとは? 天才・魚豊の新作から残酷すぎる野球漫画まで、期待作を大紹介

『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』(原作·中村力斗/作画·野澤ゆき子)

 もちろんいい意味で言うんですけど、今、いちばんイカれてるマンガだと思いますね。主人公の男子が神社の神様から「運命の人が100人いる」「運命の人と幸せになれなかったら、不幸な目に遭って死ぬ」と告げられる。実際、その直後から運命の人とどんどん出会うんだけど、全員が大事だから、みんなと仲良くしようとがんばるんですよ。

 設定自体もめちゃくちゃなんだけど、何がすごいって、どんどん出てくる女の子たちを魅力的に描かなくちゃいけないじゃないですか。既に30人くらい登場してるんですけど、このまま進んでいくと破綻しかないと思うんだけど、今のところ違うタイプの女の子、いい感じで濃いキャラクターが次々に登場して、上手くいってるんです。もしかしたら誰も成し遂げてないことを達成するのでは?と思うし、自分は実験的なマンガとして読んでます(笑)。

 設定の新しさだけではなくて、物語の進め方もすごく上手いんですよ。“100人と付き合う”なんてまったくリアルではないけど(笑)、クスッと笑えるところもあって。マンガ好きの人は哲学的な作品を好む傾向があると思いますけど、『君のことが~』みたいなハチャメチャなパワーがあるマンガもぜひ読んでほしいですね!

『シキュウジ -高校球児に明日はない-』(原作:大沼隆揮/作画:ツルシマ)

 高校野球のマンガなんですけど、『シグルイ』とか『軍鶏』みたいな格闘マンガを読んでるような気分になりますね。

 甲子園の決勝で2人のエース("神の子"天城雄大と"怪物"佐藤さとる)の投げ合いを描いているんですけど、試合の内容とかやってることがめちゃくちゃなんですよ。今や“高校野球で自分の野球人生を使い果たす”なんてもったいないし、そんな時代ではなくなったじゃないですか。なのに「シグルイ」に出てくる球児たちは“甲子園のマウンドで死にたい”とか“このピッチャーの球を受け取れるんだったら、手の骨がボキボキになってもいい”って命の限り戦おうとするんです。

 もちろん球数制限なんて関係ないし、人間離れした天才たちがお互いの野球人生をつぶし合うっていう。かなり残酷な描写もあるし、現実には絶対にありえないんだけど、こういうマンガってーー自分でもどういう脳の仕組みなのかわからないんですけどーーロマンがあるなって思うし、読んでるとアドレナリンが噴き出て来るんですよ。

2024年の漫画業界への期待

 『鬼滅の刃』『チェンソーマン』『呪術廻戦』など、「週刊少年ジャンプ」を中心にして、ここ数年は社会現象になるような作品がどんどん出てきましたけど、2023年はそこまで突き抜けたマンガはなかったのかなと。『【推し子】』は話題になりましたけど、数年前から注目されてましたからね。

 もちろん面白いマンガは多いし、魚豊さん、藤本タツキさんをはじめ、若い才能が素晴らしい作品を発表していて。今回紹介したマンガ以外にも、『日本三國』(松木いっか)も相変わらずすごいし、連載が始まったばかりの『カグラバチ』(外薗健)も期待大。アプリやウェブで挑戦的な作品が出てきて、多様性も広がっていると思うんですよ。2024年はそのうねりが大きくなるような作品が出てくる気がしています。「去年はあまりマンガをチェックしてなかったな」という人も、今年はぜひ一緒に面白いマンガを見つけていきましょう。

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