アニメ『姫様“拷問”の時間です』で苦しめられるのは視聴者? 話題作の楽しみ方を考察

 1月8日24時(9日0時)より、アニメ『姫様“拷問”の時間です』がスタートする。2019年から「少年ジャンプ+」で連載中の人気漫画(原作・春原ロビンソン/作画・ひらけい)を原作とする本作は、物騒なタイトルとは裏腹に、思わすほっこりする癒しの異世界コメディだ。そして、深夜に“拷問”を受けるのは視聴者の私たちになるかもしれない。

 本作の主人公は、とある王国の王女にして第三騎士団長の「姫様」。魔王軍の手により囚われの身となり、日々“拷問”を受けて王国の秘密を自白させられるのだが、その内容にほっこりさせられる。姫様が口を割ってしまうのは「苦痛から逃れるため」というより、基本的に「ご褒美を得るため」なのだ。

 愛らしい拷問官たちは、目の前でほかほかのトーストを頬張ったり、もふもふの動物と戯れたり、ゲームに興じたりと、“卑劣”な手口で姫様の欲望を刺激する。そして、姫様は口を割り、拷問官たちと楽しいひと時を過ごす。一緒に捕えられた相棒であり、意思を持った伝説の聖剣である「エクス」が毎度のようにツッコむことになるのだが、そこで漏洩した情報が魔王軍に悪用される様子はなく、この愛すべきマンネリが続いていく。

 このように誰も傷つけない楽しいコメディである一方で、アニメの視聴者は姫様以上にダメージを受ける可能性がある。というのも、本作の舞台自体は一般的な異世界ファンタジーに準じたものであるものの、例えばカップ麺や海外ドラマ、ゲームなど、現実に置き換えられるアイテムやコンテンツが普通に登場するのだ。

 お腹が鳴ったり、なんとなく寝付けなかったりする深夜、美味しそうなB級グルメや友人(拷問官)との楽しいゲームを見せつけられるーー姫様のようにその場でご褒美を得ることもできない視聴者にとっては、タイトル通りの「“拷問”の時間」になるのではないか。耐えきれず「こたつでアイス」や「深夜のラーメン」など、背徳的な行為に及んでしまう人はきっと少なくないだろう。

 逆に考えると、私たちが生きる日常がいかに快楽に溢れ、心が弾む出来事で満ちているか、ということを思い出させてくれるのが『姫様“拷問”の時間です』という作品だ。本作における“拷問”は、換言すればそこらじゅうに転がっている“小さな幸せ”であり、それを途切れることなく探してくる拷問官たちも、いつでも自国の情報と引き換えに全力で楽しむ姫様も、気落ちするニュースも多いご時世に学びを与えてくれる存在だと言えなくもない。

 どんなエピソードがどんな順番でアニメになるのかは定かではないが、聖剣エクスにフォーカスされる回があったり、見た目こそ凶悪だが子煩悩&オタク気質な魔王に癒される回があったりと、変化球も楽しい本作。ダイエット中だったり、夜更かししてはいけない人はお腹にグッと力を入れて、“拷問”に耐えてみてはいかがだろう。

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