塚原あゆ子×野木亜紀子『ラストマイル』は予言的な作品に? 社会派エンターテインメントへの期待

 そして何より「そう来たか」と驚いたのが、物流を題材にしていることだ。来年4月から働き方改革関連法の影響で、トラックドライバーの年間残業時間が960時間に上限規制される。収入が激減するため、廃業を考えているドライバーや運送会社も多く、荷物が期日内に届かない問題が多発するのではないかとも懸念されている。

 この問題は「2024年問題」と呼ばれ、ニュース等で多数報道されているのだが、元々、ネット通販の普及により物流業界が取り扱う荷物の量は年々増加しており、慢性的な人手不足もあり、いつパンクしてもおかしくない状態が続いていた。

 物流は動脈・静脈といった血液を運ぶ毛細血管に喩えられることが多いのだが「荷物の中に何者かが悪意を持って爆発物を紛れ込ませたとしたら?」という最悪な想像を、映画のアイデアに用いたのは、流石『アンナチュラル』と『MIU404』で、様々な社会問題を社会派エンターテインメント作品として世に送り出してきた塚原と野木のコンビである。

 『アンナチュラル』の第一話は、新型コロナウィルスのパンデミックを先取りした予言的な物語だったが、『ラストマイル』も予言的な映画になるのかもしれない。

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