「書楽」に続いて「書原」も……南阿佐ヶ谷にあった“目利き”の名書店、移転先のつつじヶ丘店が閉店へ
「書楽」に続いて、「書原」も消えるのか―― かつて南阿佐ヶ谷に店舗を構え、現在は京王線のつつじヶ丘駅前に移転して営業をしている「書原つつじヶ丘店」が、2024年1月14日に閉店することが決まった。公式Xが発表し、店の前には閉店の告知が掲示されているようだ。
Xには、「いつもご愛顧いただきありがとうございます。誠に勝手ながら、書原つつじヶ丘店は2024年1月14日をもちまして閉店することとなりました。これまでの暖かいご支援に心より感謝申し上げます」と、感謝の言葉が述べられ、「あと1ヶ月と少しの営業となりますが、よろしくお願い致します」と、綴られている。
JR阿佐ヶ谷駅前にある「書楽」が2024年1月8日に閉店することが決まったときも、XなどのSNS上で閉店を惜しむ声が続々とUPされた。そのわずか数日後に、まさかの「書原」が閉店するという事態に、SNSでは驚きの声が上がっている。
公式ホームページによると、「書原」は1967年に先代の上村卓夫社長が11坪ほどのスペースで南阿佐ヶ谷に書店を開いたのが始まり。上村社長の「書店とは著者と読者をつなぐ空間であり、考える楽しみを提案する場所である」との強い思いを継承し、「街の本屋」を目指して営業を続けていた。
南阿佐ヶ谷では靴流通センターを経営するチヨダが本店を置くレトロなビルに入居。あらゆるジャンルの本を網羅した独特の店内は、サブカルチャー系のクリエイターからも愛されていたが、2017年に閉店した。高井戸店(広和書店)も営業していたが、コロナ禍の真っただ中の2022年1月10日に閉店しており、つつじヶ丘店を残すのみとなっていた。
これまでは地方の書店の閉店のニュースがたびたび報じられていたが、東京で相次いで老舗の新刊書店が消えてしまう現状に、出版界の未来を心配する声が寄せられている。新刊書店の店舗数は急激に減少している。日本出版インフラセンターのデータによれば、全国の書店の数は、2003年度には2万880店あった。しかし、昨年度には1万1495店まで落ち込んでいる。書店の閉店は複合的な要因によるものが大きいが、紙の本から電子書籍に移行が続いていることや、雑誌の人気が低調で、書店の経営を支える定期購読層の書店離れが進んでいることなども影響していると考えられる。
地域に根差した駅前の書店をどのようにして守っていくのか。出版業界全体で議論が行われるべき段階に来ているのではないだろうか。