三代目JSB・ØMIが明かす、人気絶頂の裏で抱えていた孤独と葛藤 「“美しい終わり”を大事にしている」
三代目 J SOUL BROTHERSのボーカル・ØMI(登坂広臣)が、10月17日、2ndフォトエッセイ『LAST SCENE』(幻冬舎)を発売した。今年1月に撮影したという写真のロケ地は、ØMIにとって原点回帰できる場所、フランス・パリ。エッセイパートには、8年前に発売した1stフォトエッセイ『NOBODY KNOWS』(幻冬舎)の続きとなる、2015年以降のエピソードが主に綴られている。人気絶頂の裏でØMIが抱えていた孤独や葛藤、大切な家族との別れ、そして切ない恋の思い出――。「次があると思わず、最後のつもりで全力を尽くしていく」という想いで制作した本作について、今の想いを語ってもらった。(斉藤碧)
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『NOBODY KNOWS』以降もいろいろなことがあった
――1stフォトエッセイ『NOBODY KNOWS』の発売から8年ぶりのフォトエッセイとなりますが、いつ頃から制作を始めましたか?
ØMI:以前から幻冬舎さんとお仕事させていただく際に、度々「フォトエッセイ作りませんか?」とか「書籍出しませんか?」とご提案いただいていたんですが、なかなか踏み切れなくて。ようやくフォトエッセイを作ってみようかなと思い始めたのは、昨年でしたね。というのも、前作『NOBODY KNOWS』を出させていただいた時に、生い立ちから2014年頃までの自分の人生を全て伝えきったつもりでいたんですよ。人生が変わるオーディションを経験して、アーティストになって……という過程も全部。だから、前作を制作している時も「これが最初で最後だ」と思いながら作っていましたし、第二弾を作ったところで、新たに伝えられることがあるのかなって思ったんです。でも、冷静にこれまでのことを思い返してみたら、たしかに『NOBODY KNOWS』以降もいろいろなことがあったなぁって気づいて。今の僕が、日々全ての仕事に対して「これが最後だ」という意気込みで臨んでいるように、『LAST SCENE』というタイトルでフォトエッセイを制作することにしました。
――つまり『LAST SCENE』というタイトルは、本格的に制作に入る前から見えていたんですか。
ØMI:はい。写真のロケ地をどうするとか、本文の構成をどうするかっていう以前に、次に書籍を出すならこのタイトルでいこうって決めていました。一応『LAST DANCE』とか『LAST SONG』とか、候補は他にもあったんですけど、自分の生き様を形にしたいっていう意図があって。幻冬舎の方と相談しながら、最終的に選んだのが『LAST SCENE』でした。
――タイトル先行で世界観を作り上げていくというのは、ØMIさんの楽曲制作と通じるものがありますね。
ØMI:そう、曲を作る時と同じ感覚でしたね。『LAST SCENE』という書籍を作りたいから、じゃあ写真はどうしよう? 文章は?っていう、いつもの手順で制作しました。
――2023年10月に発売することにしたのは、なにか理由が?
ØMI:フォトエッセイのベストな発売タイミングは、僕にもよくわからなかったんですけど。昨年の段階で、2023年の三代目JSBは、アリーナツアーやMEET&GREETツアーといったアットホームな活動が続くことが決まっていましたし、その先にはドームツアーも控えているという、フルボリュームな1年になることが予想されたので、その中で僕のパーソナルな部分を知ってもらうのが一番いいんじゃないかなと思ったんです。そういう理由で、僕のほうから「ドームツアーを直前に控える時期にフォトエッセイを発売したいです」と相談させていただき、今年1月にパリに行って写真を撮影してきました。
――パリはØMIさんにとって“時”を感じる場所だそうですが、写真を撮影するにあたり、こだわったことはなんですか?
ØMI:今回自分がこだわったのは、「前作『NOBODY KNOWS』と同じスタッフ構成でやらせていただきたいです」と提案させていただいたことくらいですね。フォトグラファーは、パリ在住でデビュー当時から撮っていただいているWATARUさんにお願いして。それ以外のスタッフ陣も、「記念すべきフォトエッセイだから、新しいスタイリストとヘアメイクさんにお願いして、新たな自分を見せたいです」って身構えるんじゃなくて、なるべく素の自分でいられる方々にお願いしました。もちろん、いろんな衣装を用意していただきましたし、いろんなパターンを提案していただいたんですけど、心の着飾りがないというか。「よし、撮影するぞ!」って気合いを入れて臨むというよりは、気心知れたスタッフさん達とカフェでご飯を食べて、普通に喋って、そのまま写真を撮っている感じでしたね。本の構成に関しても、自分1人でこだわって作り込んだというよりは、前作でお世話になった方々に良い意味で料理してもらって。自分はそこに染まっていく、という作り方でした。
――その撮影時期に、ちょうど岩田(剛典)さんも別の仕事でパリに行っていたそうですね。
ØMI:はい、毎晩のように一緒に過ごしていました(笑)。それもあって、パリにいながら自然体でいられたなって思います。
常に『LAST SCENE』という美学がある
――エッセイ部分には、ØMIさんが長年抱えてきた孤独や葛藤、三代目JSBがデビュー10周年を迎える裏で浮かんだ“解散”の文字、大切なご家族との別れなどが、綴られています。これらの出来事を1冊にまとめるにあたり、どんなことを感じましたか?
ØMI:エッセイ部分も、気心知れたインタビュアーさんと話しながら記憶を掘り下げていったんですが、あまりにもこの8年間が濃かったので、初めは思い出せないことばかりでしたね。当時は今以上にハードスケジュールでしたし、これだけいろんなことがあると、記憶がどんどん上書きされていっちゃうんだなって実感しました。でも、インタビューをしてもらう時に年表を用意していただいたところ、「あのツアーをやっていた時に、裏ではこんなことがあったんだ!」とか「えっ、この時、あれがあったの?」っていうのがたくさん出てきて。フォトエッセイに取りかかる前は、「もう話すことないでしょ」って思っていたのに、思いのほか引き出しがあって驚きました(笑)。
――中には、あえて奥の方に閉まっていた引き出しも?
ØMI:忙しい日々の中で立ち止まらずに活動するために、あえて蓋をしてしまっていた想いもありましたし、逆に、自分が忘れられなくて覚えていることもたくさんありましたね。そういうことは、必死に思い出さなくてもスラーっと口から出てくるので、同じ時期に起こった出来事でもこんなに違うのかと、すごく不思議な気持ちになりました。
――それこそ、鬱になってしまったという2020年頃のことは、インタビュアーさんに話すのもツラかったんじゃないかなと推察します。
ØMI:そうですね。……って言いたいところですが、そうでもなかったかな(笑)。
――おっ、ØMIさんの“自他ともに認めるポジティブ野郎”(本文より引用)なところが出ましたね。
ØMI:あははは。確かに、僕も嘘偽りのない言葉で書いたし、活字にするとシリアスに伝わりやすいので、重く受け止めちゃう方もいると思うんですよ。すでにこの本を読んでくださったファンの方のリアクションを見ていても、「俺、今にも死にそうだと思われてる!?」って感じるようなメッセージをいただくことがよくありますし(笑)。「長生きしてください」って泣きながら言われたりすると、それだけ僕のことを大切に思ってくれているんだなって思います。ただ、ありがたい反面、僕自身はそんなに重く考えていないので安心していただけたら。あの当時の自分が「今の気持ちを話して」って言われていたら、言葉に詰まっていたかもしれないけど、今の自分は良いコンディションで活動できているので、鬱になったことも1つの人生経験として話せたし、あの頃を振り返ってツラくなることはもうないよって、この機会に伝えたいですね。
――吹っ切れたようでよかったです。ファンの方からの「長生きしてください」というメッセージは、ØMIさんのアーティストイメージがしっかり浸透しているからこそ、出てきた言葉じゃないかなと思ったのですが、その点についてはどう感じますか?
ØMI:アーティストイメージって、俺が音楽シーンからすぐに消えそうな人だと思われてるってことですか?(笑)
――違いますよ(笑)。ØMIさんが掲げるコンセプト“CLAIR DE LUNE(月の光)”には、儚さや繊細で美しいイメージがあると思うのですが、それをそのままØMIさんの人生観と繋げて考えた結果、出てきた言葉なんじゃないかなと。
ØMI:ああ、なるほど。そういう意味では、僕が人生において“儚さ”や“美しい終わり”を大事にしているのは事実ですね。だから『LAST SCENE』という言葉が自然と出てきたんだと思います。とはいえ、それは別に「しょうがなくラストになってしまった」っていう諦めの言葉ではなく、すごく前向きな言葉で。本にも書いてある通り、三代目JSBとしても、毎回これが最後だと覚悟してツアーを廻っているし、ソロ活動も「消えてしまいそうな美しさで魅了したい」と思いながら、その都度全力でパフォーマンスしているから、ファンの人にもそう感じてもらえているんだろうし……っていう。これまで僕がやってきたこと、そして今やっていることの主軸には、常に『LAST SCENE』という美学があるなと感じています。