見取り図・リリー「母子家庭だったけど、僕は全然幸せだった」 MOE絵本屋さん大賞で注目『ももからうまれたおにたろう』に込めた想い

おにたろうの成長シーンは、あの漫画がヒントに!?

――すべてのページにリリーさんの思いが溢れていると思いますが、特に好きな場面はありますか。

リリー:育ての親がおにたろうに、「鬼にもいい鬼と悪い鬼がいる」と語るシーンかな。ちょっとメッセージ性があるかもしれません。世の中には様々な考えの人がいる。視野を変えてみたら、決して考えでは画一的ではないわけです。鬼の世界も同じで、いろいろな鬼がいてもおかしくないのではないかと思います。

――成長したおにたろうはなかなかのイケメンですね。モデルは存在するのでしょうか。

リリー:モデルと言うか、描いている時に『ドラゴンボール』で悟空がいきなり大きくなった時の衝撃が頭の中にあって。ピッコロ大魔王を倒した後、今まで小さかった悟空が急に成長して大人になった、あの驚きは今でも覚えています。作中には、僕が今まで辿ってきたエンタメから学んだものを、これでもかと盛り込みました。

――あと、私はおにたろうの表情がシンプルなのがいいなと思いました。

リリー:おにたろうが最初はぜんぜんしゃべらないけれど、後半にセリフを口にするのはハロルド作石さんの漫画『ゴリラーマン』の影響かな(笑)。おにたろうは、もっと表情のパターンがあったほうがいいじゃないかと言われましたが、僕はシンプルな方が、おにたろうの感情が溢れ出す場面、特に涙を流す場面で感情移入できると思ったんです。

大人が読んでも楽しめるメッセージ性

――本当の親と思われる人が現れても、おにたろうは育ての親の鬼をとり、鬼ヶ島から出ませんでした。

リリー:育ての鬼は自分自身が悲しいのに、おにたろうに対して、本当の親のもとに行った方がお金持ちだし、幸せになれると勧めます。自分で描いていて言うのもなんですが、僕は育ての鬼の優しさが大好きです。

――キジ、サル、犬はこの物語で何もしませんでした。それを象徴する最後のシーンも印象的です。

リリー:制作中に、キジ、サル、犬のシーンを入れようと思いついたんです。結果的にいいオチがついたと思います。この子たちがなにもしていないのは、兵力として使われず、鬼と争いも起きていない証拠になっています。平和な世界を表せているんじゃないかな。

――ページをめくたびに発見があり、何度も何度も読み返したくなる一冊だと思います。リリーさんはどんな読者に読んでもらいたいと考えていますか。

リリー:親も子どもにも、年齢も性別も問わず、いろいろな人に読んでもらいたいですね。本書を手にして、親への思いを感じて欲しいし、親にはぜひ子どもへの思いを感じていただければと。親子愛はもちろん、誰しもがもつ、自分にとって大切なものに思いを馳せて欲しいなと思います。結局のところ、ぜひ買って、読んでください、ということに尽きます(笑)。どうぞ、よろしくお願いします。

■絵本情報
『ももからうまれたおにたろう』
著者:リリー(見取り図)
発売日:9月15日
価格:1,650円(税込)
出版社:サンマーク出版

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