『すべての恋が終わるとしても』など“バズる本”で注目! スターツ出版、急伸の背景
「スターツ出版文庫」については、決算短信でも「順調に売り上げを伸ばしたこと等により増加いたしました」と、書籍・コミック部門の38億5400万円(前年同期比28.5%増)という累計売上高の大幅増進に貢献していることが指摘されている。これには、クレハによる小説が原作の『鬼の花嫁』シリーズが、コミックも含めた累計で150万部という大人気を獲得していることも含まれている。11月18日と19日は人気声優たちによる朗読劇も開催される予定で、メディアミックスが進んだ先で映像化となれば、さらに大きく数字を伸ばしそうだ。
通期予想で82億円の売上高は、2096億円の集英社や1694億円の講談社に及ぶものではまったくないが、個々に優れた作品を見いだして刊行することで、出版業界の中で強い存在感を得ることができる。スターツ出版はその点で、「野いちご」「Berry's Cafe」「ノベマ!」といった小説投稿サイトを自社で運営して、多彩なジャンルの作品を集めて、『鬼の花嫁』のようなヒット作を生み出している。
「comic Berry's」や「Berry's Fantasy」といった電子コミック誌も運営していて、そこから単行本化作品も送り出している。9月1日には「恋、だけじゃない。」をコンセプトとした、現代を生きる女性を応援する恋愛電子コミックレーベルという触れ込みで「Comic Lueur」を創刊。大人の女性に向けたコミックの分野を強化した。競争相手も大勢あって成功はなかなか容易ではないが、紙の漫画誌で休刊が相次ぐ出版情勢の中で、新しく進出する以上は何らかの商機を見ていると言えそう。3作品でスタートしたサイトがどうなっていくかに、漫画好きも漫画業界も関心を向けておく必要がありそうだ。