「サイン色紙送って下さい問題」『代紋TAKE2』渡辺潤の投稿が話題、森川ジョージ「わかるわー」
『代紋TAKE2』など数々の代表作をもち、現在は『ゴールデン・ガイ』を連載中の漫画家・渡辺潤がXを更新。ファンレターで「大ファンなのでサインを送って下さい」と、色紙を同封してくる人がいることに言及し、「非常に申し訳ないのですが… 一度応じてしまうと全てに対応しなければいけなくなりますので… どうかご理解下さい」と、ファンへの理解を求めている。
この渡辺のポストには、『はじめの一歩』の作者・森川ジョージも「わかるわー」と反応。筆者の周りの漫画家にもLINEで話を聞いたところ、多くの漫画家が経験していることがわかる。記者の妻も漫画家であるが、同様の事例は何度もあった。なお、渡辺はファンサービスが旺盛な漫画家であり、決してサインをするのが嫌だということではない点を、しっかり明記しておきたい。
漫画家の小林よしのりが自身のブログで、漫画家がサイン本を作るときは絵を入れる必要があり、手間がかかると言及している。そう、漫画家のサインが芸能人と違うのは、サイン色紙にキャラクターなどの絵が入ることが多い点である。そのため、ファンにとっては一種の美術品といえる魅力があるし、それゆえコレクターも多い。しかし、絵が入る分、サインが完成するまで手間がかかってしまうのだ。
漫画家は絵を描くのが仕事だから、絵なんてすぐに描けるだろう、と思っている人もいるのかもしれない。確かに、手塚治虫のように1分くらいでイラスト入りのサインを爆速で描いてしまう漫画家もなかにはいるが、これは一種の名人芸のようなものであり、例外中の例外と見たほうがいいだろう。
ちなみに、記者の妻はサイン色紙を1枚描くのに最低限のアタリをとるので、モノクロでも5分ぐらいはかかる。プレゼント用のカラー色紙だと、1時間以上はかかる。ちなみに、記者も漫画好きなので、漫画家に会うとサインを貰う。妻がサインに悪戦苦闘している姿を見ると申し訳ないと思いつつ、やはり貰ってしまうので人のことは言えないのだが、漫画家のサイン事情は大変な問題なのだ。
ファンがクリエイターに対し、「サインを書いて送ってほしい」と要望する文化は、おそらく、明治時代に作家が職業として確立された頃には存在していたと思われる。夏目漱石のもとには、ファンから短冊を書いてくれ(つまりサインを書いてくれ)という手紙が大量に寄せられていたようで、辟易していると随筆で書いている。
うろ覚えだが、記者が以前にどこかの文学館を取材した際、とある小説家がファンから「子どもの名前を考えてくれ」と要望されたという話を聞いたことがある。こうした無茶ぶりなお願いは昔から少なくなかったようだ。
さて、サインに話を戻そう。あくまでもサインはファンサービスの一環として行われるものだ。クリエイターは基本的にファンサービスは熱心であり、サインにも寛容であることが多い。だからこそ、貰う側も最低限のマナーは必要だろう。例えば、漫画家や小説家であれば、しっかり単行本を買ってからもらうようにしたいものだ。
これは「コミックマーケット」の文化であるスケッチブックでも問題になるが、本を1冊も買っていないにもかかわらず、絵を無料で描いてくれと依頼する人がいまだにいる。また、スポーツ選手などで結構あるあるなのだが、「誰だか知らないが、とりあえず貰っておこう」みたいな気持ちで、サインをねだるのは慎みたいものだ。これらは明らかにマナー違反であろう。
渡辺潤はXを頻繁に更新し、ファンとの交流を楽しんでいる。そして、サービスが旺盛な漫画家であり、単行本の発売の際にはなんと生原画のプレゼントを行っている。ファンは積極的に申し込んでいただきたい。それにしても、渡辺潤と交流ができるうえに原画まで手に入ってしまうとは、SNS文化は凄いものだと思う。だからこそ、クリエイターには敬意を払い、ルールを守って楽しみたいものである。