『ワンパンマン』『モブサイコ100』ONE原作の最新作がスゴい 人類の“天敵”が総登場する『バーサス』の魅力

 魔王軍に巨人、怪獣に異星人、人間の身体を乗っ取る寄生生物に、暴走するロボットーー漫画の世界で、人類はいつも何かと戦っている。それぞれの世界の問題を一挙に解決するべく、違う世界線の人類が共同戦線を張り、それぞれの脅威=「天敵」を討つ作戦を立てるとしたら……。

 『ワンパンマン』(作画:村田雄介)や『モブサイコ100』で知られるONE原作の最新作、『バーサス』(漫画:あずま京太郎/構成:bose)の第2巻が11月9日、発売された。前2作は好きだが、本作についてはまだ読んだことがない、という人も少なくないのではないか。

 「月刊少年シリウス」で連載中の『バーサス』は、冒頭に記したように複数の世界線が交わり、人類の存亡をかけた戦いに挑む、という異世界ファンタジーだ。魔族という天敵の台頭により、人類が虐げられて数百年。大魔王と47体の魔王を打倒すべく、人類は選び抜かれた47人の勇者を戦いに送り出すが、まったく歯が立たない。

 そんななか、勇者たちとは別働の魔導士隊は惑星を覆うほど巨大な「召喚魔法陣」を完成させ、「別の世界」を丸ごと召喚。自分たちとは違う歴史を辿った人類に魔族の打倒を任せようとするが、彼らも「人類の敵によって滅亡の危機に瀕している」というーー。

 切実なテーマを含みながら、わりとお気楽なムードのある『ワンパンマン』『モブサイコ100』と比較して、本作の世界観は極めてシビアだ。サイタマやモブのような“一見冴えないが圧倒的な力を持つ主人公”は(現状のところ)登場せず、人類は「天敵」に蹂躙されている。交わった世界は13に及ぶが、その全てが異なる天敵に脅かされており、絶望しかない。そして、それらの天敵が全て同じ世界に同居してしまう状況だ。

 異なる能力、異なる文化を持った人類の共闘も見ものだが、面白いのは「天敵同士を潰し合わせる」という作戦だ。たとえば、『寄生獣』の寄生生物たちと、『呪術廻戦』の呪霊たちがぶつかったらどうなるだろう。『鬼滅の刃』の鬼と『チェンソーマン』の悪魔だったらどうなるのか。人類にとっての絶望同士が戦うというスリルと、“漁夫の利”的な希望がそこにはある。

 加えて、ONEは作中で卓越した能力を持たない“モブ”的なキャラクターの造形にも定評があり、登場機会が少なくても愛着のわく人物がすでに複数生まれている。連載はまだ10話を数えたところで、漫画アプリ&サイト「マガポケ」でも読むことができるため、すぐに追いつくことが可能だ。ヒットメーカー·ONEの鋭いアイデアが生かされた本作をチェックしてみてほしい。

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