日曜劇場『下剋上球児』ドラマとは異なる原案の面白さ 自信を失くした球児が甲子園を掴めた理由とは
ドラマにも通じるもの
――今、菊地さんに聞いているのは、あくまでノンフィクションの白山高校の物語です。2018年に甲子園出場をした事実の話。でも、ドラマは野球を知らない人さえ楽しめるように、ちゃんとドラマしていますね。
菊地:僕が描いたのは、あくまでノンフィクションとしての『下剋上球児』です。多くの人に伝わるフィクションとして、連続ドラマを見据えて描いていません。だから、全く違う話として、楽しんでもらえればいい。
――だけど、案外近い印象もありますよ。
菊地:そこは、しみじみとうれしかったです。白山高校を取材していた、あの残暑の時期に通じるものがあります。僕が感じた白山高校の大好きだったところを、ドラマのスタッフの方がちゃんと残してくれたように思えて。ちょっと泣いてしまいました。
――学校名も、登場人物も、全部物語として変わっているのに、鈴木亮平さんや黒木華さん見ていると、なんだか、「うんうん」となる。
菊地:僕が描いたのはドラマとは別のストーリーです。でも、通じる部分はある。人間の愛おしさとか、三重県の地域の方々のあたたかさとかは、同じです。まあ、僕は野球を通して「人間を描いている」と思っている人間です。野球のプレーヤー目線で、『野球部あるある』をやっていたころから、そこは変わらない。鈴木さんや黒木さん、ドラマのスタッフの方々がつくり上げる『下剋上球児』にもシンパシーを感じられて、感激しています
――電車の駅のシーンとか、高校生らしい感慨を思います。
菊地:コンビニ少ないから、ファミチキ愛好者とかね、小ネタを拾ってくれています。うれしいんですよ。もちろん、三重県の人からすると、都合上、土地の位置関係とか違うけど、それは県の人だからこそ突っ込める部分。楽しんでほしい。
――この本を読みたくなる人も多いでしょうね。ただし、これって、小説じゃなくて、野球のノンフィクションコーナーにあるんですよね。栗山監督の本の横にあるイメージ。話題の本のコーナーにないと、ちょっと見つけにくいかも。
菊地 まあ、僕は『野球部あるある』の著者ですから、普通はそこなんですよ(笑)。興味がある方はぜひノンフィクションコーナーを覗いてみてください。
(取材協力:高校野球酒場 球児園)