原作を読めば魅力倍増? 朝井リョウ原作ドラマやSF超大作『三体』実写版まで、“読書の秋”にWOWOWが贈る上質なエンタメ体験

 11月3日~5日の3連休に合わせ、WOWOWの番組配信サービス・WOWOWオンデマンドで、特別企画「秋と言えば読書!読んだ気になる図書館」が展開中。オリジナルドラマ・映画・海外ドラマと、各カテゴリに“原作つき”の名作/話題作がズラリとラインナップされており、この機会に「小説」と「映像」の両面から、上質なエンタメ作品を楽しみたいところだ。

 とはいえ、それぞれに尖った魅力を放つ作品が揃っているだけに、「目移りしてどこから手をつければいいかわからない」という方もいるだろう。そこで本稿では、朝井リョウの同名小説を原作とした日常を揺さぶるミステリードラマ『世にも奇妙な君物語』、全世界1500万部突破の原作ミステリー小説との比較が味わい深い映画『ザリガニの鳴くところ』、近年のSF小説として際立った人気を博している劉慈欣『三体』を原作とする海外ドラマと、各カテゴリからオススメの作品をピックアップした。

 秋の夜は長い。11月中にWOWOWオンデマンドで作品を視聴すると図書カードが当たるほか、連休期間に毎日アプリを起動すると当選確率が2倍になるキャンペーンもあり、多くの作品に触れるモチベーションも高まりそうだ。まずはこの3作品から、小説と映像作品を行き来する贅沢なエンタメ体験を楽しんでみてはいかがだろう。(編集部)

オリジナルドラマ/『世にも奇妙な君物語』(評者:藤原奈緒)


 かの有名なオムニバステレビドラマ『世にも奇妙な物語』ではなく、『世にも奇妙な君物語』。なぜ「君」物語なのだろう。「君」が加わることによって、「これは視聴者/読者、すなわち“あなた”の物語ですよ」と作り手が語りかけてくるような気がする。

 本作は、直木賞作家・朝井リョウが書いた同名短編小説を原作にしたオムニバスドラマである。原作は、本家である『世にも奇妙な物語』が「大好き」だと言う朝井による「勝手に原作本」。本家を踏襲し構成までも「二時間分、つまり五編分」に仕立て上げたというこだわりぶり。なおかつ、本家と違い1人の作家が全編を手掛けているため、5編目には思わぬ仕掛けが隠されていたりする。

 そしてその5編目『脇役バトルロワイアル』は、朝井版『バイプレイヤーズ』的な一面もあり、なおかつ作品全体の配役まで構想していたのではないかと思えてくる朝井の『世にも』愛に驚かされる一品である。それら5編の短編の主人公をそれぞれ黒島結菜、葵わかな、佐藤勝利、田中麗奈、上田竜也が演じ、『べっぴんさん』(NHK)の渡辺千穂が脚本を手掛け、まるごとドラマ化したのが本作だ。

 本作は、どんでん返しが魅力のミステリー作品であると同時に、朝井リョウから見た現代の俯瞰図でもある。朝井の著作『正欲』に通じる部分がある第1話を皮切りに、「コミュニケーション能力重視」の就職活動への疑問、保護者によるクレームに過剰反応する教師たちの当惑、ネットニュースの要約癖の危うさ等、日常生活を送る上で感じずにはいられない身近な違和が根底にある。

 「本当はこうあるべきなんじゃないか、こうありたい」という登場人物たちの切実な思いがとんだ「奇妙な」世界を生み出し、それがあっけなく別の視点で覆される時、切なさややりきれなさと共に、世界の見方が少しだけ変わる。 “あなた”の日常が揺さぶられる、上質などんでん返しミステリードラマだ。

藤原奈緒/ライター、書店員。学生時代の寺山修司研究がきっかけで、休日はテレビドラマに映画、本に溺れ、ライター業に勤しむ。日中は書店員。「映画芸術」などに寄稿。

映画/『ザリガニの鳴くところ』(評者:立花もも)

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 ノース・カロライナ州の湿地で、櫓から落ちたらしい男の死体が発見された。本人を含めて誰の足跡も指紋もない。状況に不審を覚えた保安官たちは、疑いの目を“湿地の娘”に向ける。美しい妻がいてなお女遊びの噂が絶えない被害者が、湿地の奥にひとりで住む、魔女ともオオカミの子とも呼ばれる女性に近づいていたのは、周知の事実。彼女ならば自然の特性を生かして足跡を消すこともたやすく、他にも状況証拠はそろっている――。と、映画『ザリガニの鳴くところ』は、湿地の娘・カイアが裁きにかけられるところから始まる。

 湿地の奥にたたずむボロ屋にひとり住み続けるカイアは、一部を除いて、街の人と接触することを避けている。幼いころ、母親が出ていったのを皮切りに、4人いた兄と姉も次々と逃げ出し、酒を飲んで暴れる父とふたりきりで残された。その父も帰ってこなくなり、自力で生計を立てなくてはならなくなったのが6歳のとき。以来、数少ない信じた相手にも裏切られ、孤独に苛まれてきた彼女の過去が、裁判の合間に語られていく。

 映画では、広大な湿地が映し出されることで、その場所でぽつんと一人生き抜かねばならなかった彼女の孤独が説得力をもって浮かび上がってくる。自然が美しければ美しいほど、なおさら、街の人たちの偏見に満ちたまなざしも、刺さる。だがもし可能であれば、原作小説もあわせて読んでみてほしい。ラストが異なるのを含め、映画とはまた違う言葉にしかできない表現で、彼女の孤独を、その生きざまを、痛々しくも美しく描き出しているのだ。

 “ザリガニの鳴くところ”とは〈茂みの奥深く、生き物たちが自然のままの姿で生きる場所〉。だが人間は、ありのままで生きることよりも、秩序を守り、みんなと同じように染まることを望まれ、そこから外れた者は排除されて蔑まれる。異端の存在であったカイアが、一人の人間として尊厳を守り、生きるために選んだ選択の数々を、ぜひ映像と言葉の両方で味わってみてほしい。

立花もも/ライター、小説家。ダ・ヴィンチ編集部勤務を経て、フリーランスに。文芸・エンタメを中心に執筆。橘もも名義で小説執筆も行う。代表作に『忍者だけど、OLやってます』シリーズ、ノベライズに『透明なゆりかご』『小説 空挺ドラゴンズ』など。

海外ドラマ/SF超大作『三体』(評者:円堂都司昭)

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 世界的大ベストセラーとなった劉慈欣のSF小説『三体』に関しては、実写とアニメで複数の映像化が進行する事態となった。このうちWOWOWオンデマンドで配信されている全30話のドラマは、三部作で長大な小説のうち、第一部を原作とするもの。地球人類と異星文明の接触を題材にした、スケールの大きな物語だ。

 各国で優秀な科学者が、次々に自殺する。彼らの死の背後になにがあるのか。ナノ素材を研究する応用物理学者とはぐれ者の刑事が協力し、謎を追う。はじめは、なにが起きているのか、よくつかめない。わかりやすく宇宙人が出てくるわけではないし、連続自殺の謎を捜査するミステリーのように進む。やがて、主人公の物理学者の眼前で、なぜか数字の列が浮かび減っていく、意味不明なカウントダウンが現れる。数字がゼロになれば恐ろしいことになりそうだし、精神的に追いつめられていく。ホラー現象である。

 一方、作中では、七面鳥は自分に餌をくれる農場主の行動を理解できないとする喩えがアニメで説明され、効果を上げている。自分の知る範囲で給餌の法則を“発見”した気になったのに、農場主にあっさり殺される七面鳥の話は、人間の科学を超越したなにかが宇宙にいる不気味さを暗示する。

 連続自殺や目の前にないはずのものが見えるといった精神や体をめぐる恐怖と、人類を圧倒する存在がどこかにいるかもしれないという漠然とした恐怖。自分が見聞きしたものしか信じない刑事と、抽象的な思考が得意な物理学者という対照的なキャラクターを通して、身近に想像しやすいミステリー的でホラー的な恐怖と、常識では考えられないSF的な恐怖が掘り起こされる。その展開が面白い。

 宇宙が瞬く現象や、過酷な環境の惑星における文明の消長を体験するVRゲーム「三体」などの表現も見事。学者たちの議論がすっと呑みこめなくても、臨場感のある映像で納得させられてしまう。見る者を包みこむ雰囲気の強度が高いのである。どんどん先が見たくなる秀逸なドラマだ。

円堂都司昭/文芸・音楽評論家。著書に『ディストピア・フィクション論』(作品社)、『意味も知らずにプログレを語るなかれ』(リットーミュージック)、共著に『本格ミステリの本流』(南雲堂)など。

秋と言えば読書!読んだ気になる図書館


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