『葬送のフリーレン』なぜ金曜ロードショーで放送? その狙いを原作から読み解く

 そんなフリーレンの声を演じる種﨑敦美は、『SPY×FAMILY』のアーニャ・フォージャーという活発な女の子の役で知られる一方、『リズと青い鳥』で無口で無表情な鎧塚みぞれという女子を見事に演じてのけた。感情が見えづらいフリーレンにぴったりなキャスティングだ。

 ヒンメル役の岡本信彦は、『僕のヒーローアカデミア』の爆豪勝己のように激情系の男子が似合う声優で、どこか達観したことがあるヒンメルをその臨終の時までどう演じるかに興味が浮かぶ。そしてフェルン演じる市ノ瀬加那は、『機動戦士ガンダム 水星の魔女』でスレッタ・マーキュリーの起伏に富んだ心情を完璧に演じきった。フェルンはフリーレンの怠惰ぶりに拗ねたりむくれたりする。市ノ瀬加那にピッタリだ。

 監督に『ぼっち・ざ・ろっく』の斎藤圭一郎を迎え、キャスティングでも放送時間でも勝ちに行っているところがある『葬送のフリーレン』だが、放送する日本テレビにとっても、それだけのことをして勝たなくてはならない理由がある。マッドハウスが制作会社だからだ。

 9月21日にスタジオジブリが日本テレビの子会社になると発表した時、話題になったのが、日本テレビはすでにタツノコプロとマッドハウスというアニメーションスタジオをすでに子会社にしているということだった。会見で、どうして新たにジブリを子会社にするのかを聞かれた日本テレビでは、タツノコプロもマッドハウスも伸び悩んでいることを挙げていた。

 そのマッドハウスが制作する『葬送のフリーレン』を「金曜ロードショー」で放送し、新放送枠で展開することは、アニメ作品としてヒットさせるだけでなく、マッドハウス自体の収益確保にも役立つという判断があったのかもしれない。

 勝利の方程式にさらに弾幕を加えて全方位に向けて発射するようなところがある『葬送のフリーレン』が、今のTVアニメの世界に何をもたらすのか。一方で、滞っていた連載に再開の兆しが見える原作は、これからどこへと向かって進んで行くのか。尽きない話題の中で、『葬送のフリーレン』という作品は、ますますの盛り上がりを見せていきそうだ。

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