あいみょん、木村拓哉、米津玄師らが『君たちはどう生きるか』を語る 『SWITCH』ジブリ特集号が充実の仕上がり

 眞人の父親の勝一役で特別出演した木村拓哉のインタビューも掲載。宮﨑駿監督から、自身の父親をイメージしたキャラクターだと聞かされたものの、どういう人か知らない木村は、「その場でイメージを瞬発的に膨らませていって、という作業でした」と振り返っている。冒頭の第一声をどうしても掴めず、それ以外の場面を収録しながら、勝一の「息子や妻へのスタンスも見えてきて、彼が何を正義としているのか、人となりが掴めてきた」。そこで最初にシーンを演じて収録を終えたあと、宮﨑駿監督から「『父のことを思い出しました』と声を」かけられたという。次に映画を観る時があったら、木村の演技から宮﨑駿監督の父親の人となりを感じ取りたい。

 主題歌の「地球儀」を歌った米津玄師へのインタビューでは、宮﨑駿監督が映画について「『自分の中にも後ろ暗い部分やドロドロした部分が奥底にあって、それに蓋をしたまま映画を作り続けてきた。でも今回はその蓋を取っ払い、ドロドロしたものを全部面に出そうと思っています』と話してくれました」と書かれていて、『君たちはどう生きるか』が持つ自伝映画的な意味合いを、今一度感じさせられる。

 宮﨑駿監督自身が語っていなくても、周囲でいっしょに作品を作り上げた人たちの言葉から、いろいろと浮かび上がってくるのは、ひとつのテーマで多面的な掘り下げを出来る雑紙の特集ならではと言えそうだ。

 作画監督の本田のインタビューでは、蒼々たるアニメーターがどのシーンを手掛けたかが紹介されていて、作画マニアを楽しませてくれる。冒頭のシーンで大平晋也が携わっていることは知られているが、眞人が頭に石をぶつけるシーンは山下明彦で、塔から飛び出して来たインコが勝一と戦うシーンは井上俊之、ワラワラがわらわらと登場するシーンは濱田高行が原画を手掛けたとのこと。ただし、頭から血が流れ出すシーンや、『文藝春秋』2023年9月号でも本田が明かしているように、魚を切ると内蔵があふれ出てくるシーンでは、宮﨑駿が手を加えて“大盛り”になっているとのこと。アニメーターとしての現役ぶりがうかがえる。

 その意味では、鈴木プロデューサーが「どうなるかわからないけど、またやるんじゃないですか」と答えているところが、宮﨑駿監督のファンには響きそう。「また、なんか騒いでますね」とも話していて、次の作品の可能性を伺わせる。『文藝春秋』でも本田がやはり、「これが宮﨑駿の最後の作品になるかどうかは、大いに疑いの余地がありますが」と、現役続行の可能性をほのめかしている。

 パンフレットからは掴めなかった『君たちはどう生きるか』に関する情報をたっぷりと得られる上に、宮﨑駿監督作品から感じ取れる火や水や風といったエレメント存在や、昨年11月に愛知県にできたジブリパークの見所なども掲載されていて、ジブリや宮﨑駿作品への感心をかきたててくれる。だからこそ次回作への思いも募る。そんな効果を持った特集号だ。

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