大垣書店、東京・麻布台ヒルズに出店 都心部での書店は”高級化”と”非日常性”がトレンドに?
コロナ禍以降、書店の閉店のニュースが立て続けに報じられている一方で、都心部に新しく書店がオープンする例も多く報じられている。大阪の「あべのハルカス」を抜いて日本一の高さのビルになることになった「麻布台ヒルズ」に、大垣書店が出店することが決まった。
大垣書店麻布台ヒルズ店は、グループとして50店舗目となり、大垣書店としては40店舗目となる。詳細は報じられていないが、約300坪の売場になるという。さて、今後の書店のキーワードとなるのは以下の4点である。
・高級化と非日常性
・大型化
・専門性
・イベント
麻布台ヒルズは森ビルが運営する高層ビルだが、入居するテナントも高級店が多くなることが予想される。その中に入居する書店ということもあって、大垣書店もラグジュアリーだったり非日常的な雰囲気のインテリアになるのではないか、と予想される。書店を訪れる楽しさを演出するためには、非日常化は欠かせない。
書店がリニューアル後、全店舗より大型化する例が相次いでいる。品ぞろえの充実が図られて、来店者にもメリットは大きいが、書店が抱える問題の解決にも大型化は有効である。本の場合、全国均一に販売価格が決まっているため、少量の販売では採算が取りにくく、地方の書店が苦境に立たされている。そのため、薄利多売を目指し、大型化が進むことが予想される。
また、専門性もポイントである。薄利多売と対極を成すが、書店のニーズとして確実に存在するのは専門書の需要である。そのため、一般的な雑誌や漫画単行本などでしっかりと利益を出しつつ、専門書を並べる棚をしっかり確保することが求められる。都心の大型書店などはその傾向が顕著だし、地方の郊外の大型書店にもこの傾向が広まりつつある。
そして、イベントの開催である。ジュンク堂書店やTSUTAYAなどの大型書店ではもはや定番となっていることであるが、作家を招いたサイン会、特定のテーマに沿ったフェアなどの開催で、書店を訪れる動機をつくることが求められている。
フェアを例に出せば、現在、国立科学博物館のクラウドファンディンが話題になっているが、夏休み真っただ中ということもあって自由研究が盛んになっている。そのため、大型書店では科学の本を始めたフェアが開催されている例が多い。フェアを企画するためには普段から取次との密な連携も欠かせないだろうし、企画を立案できる専門性を持った書店員がいることが重要である。
電子書籍での売上が増加し、紙の本を販売する書店が減少傾向にあるのは変わらない。しかし、書店は文化の発信基地として欠かせない存在であり、困難な中で模索を続ける例が目立つ。今後の書店の動向を注視していきたい。