アニメ『シンデュアリティ』は既視感の中にもビジュアル面で光るものアリ! 大型メディアミックスは成功するか

 バンダイナムコの肝入りで始まったコンテンツ『シンデュアリティ』。そのアニメ版第一話は、既視感と新奇さがないまぜになったものだった。

 ゲーム、アニメ、ホビーと、現在のバンダイナムコの繰り出せる手段を手広く使って展開される予定の『シンデュアリティ』。公式サイトに「PRODUCTS/BOOK」というカテゴリがあることから、ファンブックやノベライズ版の展開も考えられるが、かなりオーソドックスな冒険&ボーイミーツガール的ストーリーだった第一話から分かるように、その内容は設定面から割と既視感の塊である。

 物語の舞台は「新月の涙」という大惨禍に見舞われた2242年の地球。人々は地上の各地に「ネスト」と呼ばれる集落を形成していた。「ネスト」の運営には「AO結晶」と呼ばれるエネルギー資源が不可欠だが、地上には人類の脅威「エンダーズ」が蔓延っている。このエンダーズ と渡り合いながらAO結晶を採掘し持ち帰る冒険者たちを人々は「ドリフター」と呼んでいた。

 どうだろうか。なんかカッコいい名前のついた大災厄によって激変した世界。その災厄と前後して発生した謎の敵。防護壁的なものの中に引きこもって生活する多数の人類と、外に出て活動できるごく少数の人々。もうこの時点で、いろいろな作品のタイトルが脳裏に浮かんだ人も多いのではないだろうか。

 物語の主人公である青年カナタは、「ロックタウン」と言う名前のネストに暮らすドリフター見習いである。兄貴分のドリフターであるトキオと共にAO結晶の採掘とガラクタ漁りに出かけたカナタは、ミュージアムの跡地のような遺跡で眠り続ける謎の少女型メイガスと出会う。

 メイガスというのは人間そっくりな見た目をした「人類双対思考型AI搭載ヒューマノイド」である。「クレイドルコフィン」と呼ばれる大型ロボットにパイロットと共に搭乗し、探索や戦闘に関して幅広くサポートを行う、いわばドリフターのパートナー的存在だ。さまざまな見た目や性別のメイガスが存在するが、カナタが拾ってきたのは自分の名前すらわからず服も着られない、記憶を失った銀髪の少女型メイガスだった。

 カナタと共にロックタウンに戻った記憶喪失のメイガス。だが、ロックタウンを攻撃してきたエンダーズとの戦闘で、謎の少女型メイガスはカナタが組み立てていたクレイドルコフィンにカナタと共に搭乗。高い能力で戦闘をサポートし、カナタは見事に大型のエンダーズを撃破する。その時コクピットのディスプレイに表示された名前から、少女型メイガスは「ノワール」という名前を与えられる。

 どうだろうか。「任務中に偶然出会う、寝っぱなしの謎の美少女ロボット」「その美少女ロボットは記憶を失っており、ボソボソ喋り、自分一人では着替えもできないポンコツぶりを見せる」「しかし戦闘においては抜群の性能を示し、主人公は初の戦闘で見事に敵を撃破する」……。なんかこう、全体的に「こういうの、どっかで見たな〜〜」という気持ちにならないだろうか。おれはなった。なんなら、ちょっと懐かしい気持ちにすらなった。今は2023年やぞ……。

 一事が万事この調子で、正直『シンデュアリティ』第一話のストーリー/設定面に関する感想は「なんて安定感があるストーリーと設定なんだ!」と驚くほどである。「コミュニティの維持に関わるエネルギー源の採掘を個人の冒険者任せにしておくのは、さまざまな面でリスクがありすぎるのではないか」とか、「エンダーズのような存在がいるのなら、なおさら安定してAO結晶が入手できる仕組みづくりが必要なのではないか」とか「コミュニティの維持に不可欠なAO結晶が民間の市場で売買されている意味って?」とか色々考えてしまったが、ともあれ冒険とボーイミーツガールのストーリーをやりたいのなら、そんな瑣末なことはどっちでもいい。今の所アニメ版『シンデュアリティ』はロボットと少年少女の王道冒険譚ということっぽいので、設定面のよくわからなさはひとまず脇に置いておくべきだろう。

 設定、ストーリー、キャラクターについては「どっかで見たな……」と思う要素のつるべ打ちだった『シンデュアリティ』だが、反面ビジュアル面については「おおっ!?」と思うような部分が多かった。

関連記事