【漫画】家族を失った少女、その心を溶かすものはーー創作漫画『わたしだけがいない音楽会』に落涙

リロとゲトは夢の中に登場したキャラ

――『わたしだけがいない音楽会』を作ろうと思ったキッカケは?

夏梅:当時「なかよし」(講談社)と縁があって漫画を投稿していたのですが、以前制作していた作品では商業を意識しすぎるあまり、精神的に参ってしまいました。今回は「好きなものを描こう」という流れになり、その当時ハマっていた“おにロリ”と“音楽”を掛け合わせた本作を描くことになりました。

――本作は中世のヨーロッパを舞台にしていましたが、世界観はどのようなイメージで膨らませましたか?

夏梅:普段はよくファンタジー世界の作品を描いているのですが、その世界から魔法を抜いたイメージです。似非ヨーロッパと言えるかもしれません。ただ、なんとなく近代のオーストリア付近を意識はしています。

――世界観にマッチした登場人物でしたが、リロとゲトはどのようなイメージで描きましたか?

夏梅:実はゲトとリロは、約6年前から存在しているキャラクターです。当時私が見た夢の登場人物で、何度かこれまで描いた短編にも登場しています。ただ、どれもふんわりした漫画だったので、すでにある設定から人物像を浮かび上がらせ、彼らの人生に迫ってみようと思って本作を描いています。

――リロはどのように作り上げたのですか?

夏梅:ビジュアル自体は6年前に大体決まっており、スケッチブックに落書きした女の子のデザインをそのまま採用しました。ただ、商業漫画を目指すにあたり、絵柄が時代にマッチしておらず、今風になるように試行錯誤しました。性格はもともと明るい性格ではないことはなんとなく見えていて、そこからこれまでの人生を踏まえて深掘りしていった感じです。

「長髪男子最高!」

――ゲトは上品で、お茶目で、恥ずかしがり屋で、黒い長髪を結んでいて、心に深い傷を抱えていて……など、気になる要素が多く詰まったキャラでした。

夏梅:外では大人の皮を被っているけど、おちゃめで恥ずかしがり屋。でも能力は高いからプライドは高い。どこか闇があって、過去を精算しきれず、薬なしでは夜もマトモに眠れない繊細な人間。ゲトの多面性は、一人称でも描くようにしていて、私、僕、俺と状況に応じて使い分けています。ちなみにビジュアルは私の趣味を詰め込みました。長髪男子最高! ただ、いつも可愛い子ばかり描いていたので、慣れない顔で苦戦しました。

――心を閉ざしてしまう様子、クローディア家の人たちを信用したいけど“父への裏切り”とどこか考えてしまう様子など、リロの心理描写がとても丁寧に表現されていましたね。

夏梅:心理描写は感情に嘘をつかないことを意識しています。ただ、リロの思っていることを全部描くと、話がまとまらなくなるため、取捨選択がとても大変でした。個人的にはまだ完璧な表現できていなかったと思います。

――「わたしはリローリエ・クローディア」「クローディア家の娘である!」という始まりのような終わり方が個人的にとても好きなので、素敵なラストでした。

夏梅:私は最初と最後で同じ表現を使って対比させることが好きなので、ラストは最初から決めていました。

――今後の漫画制作の予定など教えてください。

夏梅:メインで取り組んでいる、長編ファンタジー創作に本腰を入れたいと思っています。感情が力を持つ魔法の星で生きるキャラクターの人生を追う、というオムニバス形式の漫画です。ボリュームが凄まじいので、「私の人生全部くれてやる!」の精神で描いています。ただ、1人で描くと暴れてしまうため、制御してくれて、また外に発信してくれる人、つまりは担当編集さんがほしいです!

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