『PSYCHO-PASS』シリーズ、ノベライズで拡張する世界観 巨大監視ネットワーク〈シビュラシステム〉の闇

 『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』の小説版には、3部作の第2部となる『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.2 First Guardian』のノベライズも収録されている。『PROVIDENCE』に登場する執行官の須郷徹平がどうして国防軍に伝手があるのか、そして巧みにドローンを操って成層圏に浮かぶ通信装置に攻撃を仕掛けられるのか知りたければ、映像を見返すなりこのノベライズを読んでおくと良いだろう。国家の捨て駒にされる軍人の苦悩が感じ取れる内容だ。

 ストーリーから外れたスピンオフとも呼べる小説群もある。シリーズに脚本として携わっている小説家の吉上亮が執筆した『PSYCHO-PASS ASYLUM』(ハヤカワ文庫JA)や『PSYCHO-PASS GENESIS』4部作(ハヤカワ文庫JA)だ。このうち『ASYLUM』は全2巻で4編を収録。槙島聖護の腹心として暗躍したチェ・グソンが槙島聖護に出会うまでのエピソードや、六合塚弥生がミュージシャンをしていた時の知り合いで、第1期の第12話「Devil's crossroad」に登場して弥生と対峙した滝崎リナとの関係に決着が付くエピソードを収録。その人となりにグッと近づける。

 『GENESIS』4部作の方は、物語を貫く〈シビュラシステム〉が稼働を始めて変わる事件捜査の様子を、警視庁の刑事だった征陸智己の体験を通して描いていたり、〈シビュラシステム〉稼働初期に起こった事件を通して、〈シビュラシステム〉に組み込まれていく人間の姿を描いていたりする。〈シビュラシステム〉に包まれた平穏な世界の成り立ちに、人々の葛藤や反抗があったことが分かる。それはアニメに描かれている時代も及んで、〈シビュラシステム〉の闇を浮かび上がらせる。

 『PROVIDENCE』の最後で驚きの行動を取って〈シビュラシステム〉を牽制した常守朱が、『3 FIRST INSPECTOR』の最後で現場に戻り、より完璧さを増した〈シビュラシステム〉とどのように対峙していくのかが今後の展開の鍵となるなら、〈シビュラシステム〉の成り立ちを知り、狡噛慎也や宜野座伸元や他の面々の思いを知っておくために、読んでおいて損のないスピンオフ小説群だ。

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