『ガンダム』シリーズに登場する「強化人間」なぜ幸せになれない? 生存率の低さは「戦争の象徴」だから?
ガンダム作品には肉体的・精神的に何らかの改造を加え、強制的に強化させられた「強化人間」が多数登場する。常人離れした能力を持てば幸せになれるかと思いきや、ファンからは「必ず失敗しているのでは?」「強化人間の生存率が限りなく低い」という声が上がっている。
■強化人間は精神的に不安定なキャラクターとして描かれることが多い?
「精神的に不安定」と言われる強化人間だが、これまでにどのようなキャラクターが登場してきたのだろうか。まず『機動戦士Zガンダム』に登場したフォウ・ムラサメを見てみよう。戦争孤児であり、昔の記憶を取り戻すために戦っていた強化人間だ。カミーユ・ビダンと出会い、心を通わせたヒロインでもある。
高い戦闘能力をもっていたが、強化の影響で精神的な不安定さも持ち合わせていた。戦火を目の当たりにし、ヒロインから一転して戦闘マシーンのような変貌を遂げてしまう。カミーユの声で正気を取り戻しつつあったが、直後にカミーユの前で戦死している。
他にも精神的に不安定な強化人間として、『機動戦士ガンダムNT』のゾルタン・アッカネンの名前が挙がる。「シャアの再来」のひとりとして開発された強化人間で、戦闘能力は高い。しかし崩壊させたコロニーを地球に落とそうとするなど、常軌を逸した行動のインパクトが強いキャラクターだ。「撃っちゃうんだなぁ、これが!」といった台詞も、ゾルタンのキャラクター性を表していると話題に上がる。
作中ではゾルタンが精神的に不安定になる理由も描かれており、「意外と理解ができる不安定さなんだよな」「かわいそう」と言われることも。理解できない不安定さよりも、親近感が湧くのかもしれない。
■生存率の低さは「戦争の象徴」だから……?
『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』には、「阿頼耶識システム」という強化措置が登場する。主人公である三日月・オーガスも、「阿頼耶識システム」で強化されたキャラクターの一人だ。「悪魔」と呼ばれるほどの高い戦闘力を持ちつつ、三日月は最終回に戦死。三日月が所属していた鉄華団もほぼ全滅に追い込まれている。
そもそもリーダーであるオルガ・イツカが鉄華団を結成したのは、少年兵たちが虐げられることなく暮らせるようになるためだった。しかし否応なく戦争に巻き込まれ戦死していく少年兵たちの姿に、ネット上では「世の中の不条理を煮詰めた作品」「辛かった」といった声が上がっていた。
2023年4月9日から2期が放送されている『機動戦士ガンダム 水星の魔女』には、身体機能拡張技術として「GUNDフォーマット」が登場する。エラン・ケレスの正体は「強化人士」と呼ばれる強化人間で、6話まで登場しているエランは「4号」。ガンダム・エアリアルを調べるという目的でスレッタ・マーキュリーに近づき、交流を深めていった。しかし任務を遂行できない「強化人士」であるとして処分が決定。死亡を思わせる描写を最後に、「4号」は姿を消している。
ネット上では「強化人間はガンダムシリーズの闇」とする声もある。「戦争の悲劇の象徴のような存在だから幸せになってはいけないのだろう」といった見方もあり、一層強化人間という存在が悲しいものに感じられる。生き残っているキャラクターの方が少ないと言われる強化人間たち。『水星の魔女』では、強化を施されたキャラクターはどのような最後を迎えるのだろうか。