『スキップとローファー』のキャラクターはなぜ共感を呼ぶのか キラキラした中に描かれる“影”のリアリティ

 リアルな高校生たちの友情をはじめとする交流が描かれる本作であるが、結月に対し苦手意識を抱く誠や、美津未たちを見下していたミカなど、登場人物たちは最初から仲睦まじい関係を築いていたわけではない。登場人物たちが互いにさまざまな感情を抱きつつも、彼ら彼女らが友人関係を維持できている背景として本作の主人公・美津未の存在は非常に大きいと感じる。

 コミックス第1巻「Scene⑤バチバチの映画館」およびアニメ第3話にて、誠は美津未はじめ数名のクラスメイトと共に映画館へ出かけることとなる。その際に誠は苦手なタイプである結月を敬遠し、誠の気持ちに気づいた結月も誠との距離を取っていた。

 そんなふたりの距離を縮めたのは紛れもなく美津未だ。映画館では気まずい雰囲気が漂うふたりの間に座った美津未は自分の好きなキャラメル味のポップコーンを食べるが、志摩の手にする塩味のポップコーンと交互に食べるとおいしいということに気づく。

 2種類のポップコーンをパクパクと食べる美津未の姿に誠と結月は思わず笑いをこらえる。そして誠は美津未の発した「今日からキャラメル&塩派」を想起しながら「村重さん(結月)のことも知れたらいいと思ってる」と結月に伝えた。

 どこか天然にも見えてしまう美津未が中心となり、リアルな高校生たちが互いに影響を与え合い、変化していく様子が描かれる本作。第4巻で結月が「(知り合ってから)まだ半年って感じしないよねあたしたち」と話したように、血の通った高校生たちがどんどん変わっていく、一瞬一瞬が濃密な学校生活が描かれるからこそ、『スキップとローファー』は多くの読者を惹きつけ、共感を呼んでいるのだろう。

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