【漫画】古参ファンの訃報、アイドルが取った行動とは? ほろ苦い旅路を描いたSNS漫画に注目

ーーアイドルグループの解散、ファンの死を題材とした本作を創作したきっかけを教えてください。

ナカマチ:身の回りで若くして亡くなってしまった人がいたりなど、いつ死んでもおかしくないと思うことがありました。そのため漫画を通じて「終わりがやってくる」ということを描こうと思い、本作を創作しました。

 物語の途中で主要人物が死んでしまう作品も描くことはできたかと思いますが、安直な感動を描きたくないという思いがあり……。亡くなってしまう人と周りの人との距離感などを考えるなかで、アイドルとして活動する人物とファンとの関係を作品の題材としました。

 アイドルとファンの関係はすごく特殊だと思っていて、お互いを友だちよりも大切に思うこともありつつ、友だちよりは距離の近しい存在でない。そのためアイドルとファンの関係であれば死を描きつつも湿っぽくなりすぎないかと思いました。またアイドルは活動期間が限られていることが多いため、終わりをテーマとする本作の題材として合っていたのだと思います。

ーー本作を描くなかで印象に残っているシーンは?

ナカマチ:北海道の海辺でビールを渡して飲むシーン、そして最後に「全力で楽しもうぜ!!!」と叫ぶシーンです。後者は本作で私が1番言いたかったことであり、いつ終わるかわからないのならいつでも全力で楽しんでいた方が得だという思いを込めて台詞を入れました。

 またビールを飲むシーンについてですが、主人公であるアイドルのふたりはビジネスパートナーでありつつ、プライベートで交流するような仲ではありませんでした。そんなふたりがグループの解散やファンの死を通じて終わりを意識し、はじめて距離が近づく。その一瞬の結びつき、何気ないけれど今しかない瞬間の尊さを表現したいと思い、何気ない行為として海辺でビールを飲むシーンを描きました。

ーー北海道や波が押し寄せる海を作品の舞台とした理由は?

ナカマチ:北海道を舞台にした理由は自分の地元であり、地元を舞台とした作品を描きたいと思いました。また終盤で海を描いたのは、海はひとつの境界を表していると感じているからです。北海道に住んでいる身として、海は本州と北海道を隔てるものとして感じており、海や浜辺は本作のテーマに合っている場所だと考えました。

 また浜辺に押し寄せる波は、2度と同じ形にならないことから刹那を感じるものかと思います。時間が戻らないことを表現するために、海を作品の到達点として描きました。

ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。

ナカマチ:小さいころから物語をつくることが好きだったのですが、絵を描くことに関してはクラスの平均よりほんの少しできる程度で、特別うまいというわけではありませんでした。そのあと制作系の仕事に就いたのですが、デジタルツールを用いてイラストを描くことが増えて、もしかしたら自分にも漫画を描けるのではないかと思うようになりました。

 そんなときにアニメ『宇宙よりも遠い場所』を見て感動し、自分も何かやってみたいと思って漫画を描きはじめました。

ーーナカマチさんは本作の他にも北海道を舞台とした作品を手掛けているかと思います。北海道を舞台とする作品を描き続ける理由は?

ナカマチ:北海道は生まれ育った場所なので好きなのですが、文化的な厚みのある本州の各地域に対して嫉妬に近い感情を持つことがあります。またTV番組や漫画で見る日本の原風景は自分にとってなじみの薄いものであったり、夏休みが31日までではなく20日頃で終わってしまったりなど、北海道は日本の標準から少し離れていると感じていました。

 北海道ではない地方への憧れを抱きつつも、創作においては北海道に住んでいるからこそ描くことのできる作品があるのではないかと思いました。そのため北海道に住んでいる人にしか描けない作品を目指し、北海道を舞台とする作品を描いています。

ーー今後の目標を教えてください。

ナカマチ:その場の温度や匂いを感じられるような作品を目標にしています。短い夏や雪が降る様子など、北海道特有の空気を感じられる作品を描いていきたいです。

 また今を生きている人に寄り添えるような作品も描けたらいいなと思っています。小ネタやちょっとしたギャグなども溜まってきているので、これからも作品を描き続けていきたいです。

関連記事