最強の男はコンビニ店員!? 不条理な強さ描く異色の格闘漫画『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』

 格闘漫画の魅力は、徐々に強くなっていく主人公の成長にある。ところが、最近人気の格闘漫画は、修行やトレーニングはすでに終わらせていて超人的強さを備えていたり、なろう系として急に超人的能力を手に入れてしまっていたりする。

 筆者が今ハマっている『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』(小学館)も、そんな“なぜか超絶強い”男が主人公だ。すでに最強ならつまらないのではないか、と思われそうだがそんなことはない。主人公は強さを持て余している節があり、周囲は主人公を置いてきぼりにして勝手に盛り上がり、物語は格闘の域を超えてあらぬ方向に進んでいくからだ。

 今日はそんな『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』(丸山恭右、Zoo著)について語っていこうと思う。

望まない強さを持った男

 主人公の川端強(かわばたつよし)は、コンビニのバイトに勤しむ美大浪人生だ。週3回公園で開かれている太極拳レッスンに通って技術を体得したが、それは望んだことではない。頻繁に戦いを挑まれる日々を送る中で、強は力をつけてしまったことを恨んでいる。

 直近の夢は芸大に入ることであり、女性からアプローチされれば鼻の下を伸ばして、未来の幸せな日々を妄想する。何よりも平和と平凡な日常を求めているから、強さは彼の人生にとって妨げであり、煩わしい以外の何ものでもないのだ。

強の周囲が勝手に盛り上がっている

 そんな強の元にやってきたのが、長年のライバルを失った空手家の星崎愛之助だ。彼は強に挑戦するもボロ負けし、弟子にして欲しいと懇願する。強は自分の強さを持ち上げられることを何よりも嫌うため無碍に断るが、愛之助の持つ格闘には関係のないスキルを目当てに徐々に心を通わせるようになっていく。

 強(と自称強の理解者である愛之助)の元にやってくるのは強さを誇示したいものだけに限らない。強の力を管理するべく中国とロシアが刺客を送り込む。そして、国際問題に発展していることに気づいた日本も強を利用しようと動き出す。

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