『薬屋のひとりごと』大ヒットを受けて“後宮医療ミステリー”続々 話題作をチェック!
薬店の娘で後宮に入れられた英鈴という少女が、甘党の皇帝のために苦くない薬を作って出したことから見初められ、妃嬪のひとりになってしまうという甲斐田紫乃の「旺華国後宮の薬師」シリーズ(富士見L文庫)も、『薬屋のひとりごと』と同じ中華風の王宮が舞台となった作品。最新の第6巻では、実家が皇帝を呪おうとしたという嫌疑が持ち上がり、後宮を追われながらも独自に動いた英鈴が、同じように後宮を追われた妃の不調を治して謀略が巡らされていることを掴んでいく。
こちらも女性の薬師が主役だが、舞台が日本の平安時代となっているのが小田菜摘による『後宮の薬師 平安なぞとき診療日記』(PHP文庫)だ。父親が中国の北方出身ということもあり、長身で赤味を帯びた髪を持ち掘りの深い顔立ちをした瑞蓮という女性が、医薬の知識を見込まれ博多から京へと連れてこられた。貴族の娘の顔にできた腫れ物を診て欲しいというもので、すぐに原因が分かった瑞蓮は、誰の言うことも聞こうとしなかった娘を諭し、適切な治療法を教えて快癒へと導く。
東宮の体に発疹が現れたり、女官が気怠さから抜けられなかったりする症状を、心理的なものと考えるところに平安時代でもメンタルクリニックの知識があったのかと思わせる。同時に、もっと別の原因があるかもしれないと探らせ突き止める展開もあって、診断の難しさといったものを教えられる。若き日の安倍晴明も登場し、医学や薬学とは対極的な陰陽師の立場から謎解きに絡むところも面白い。第2巻まで刊行中だ。