【LINEマンガ】大人気BL作品『ちりぢりゆくの』作者・まゆハル「心と心をぶつける王道ラブコメという感覚で描いている」

まゆハル『ちりぢりゆくの』©Mayuharu/LINE Digital Frontier


  LINEマンガで好評連載中のBL(ボーイズ・ラブ)作品といえば『ちりぢりゆくの』だ。フルカラー&縦読みである「webtoon」の作品で、美麗なビジュアルが目を奪われる作品だ。内容面でも「BL」というジャンルを愛好する読者にとっては、「ひとつぶで何度でもおいしい」作品だといえるだろう。今回『ちりぢりゆくの』の作者である、まゆハルにインタビュー。作品に込めた想いや創作の背景などをたっぷりと語っていただくインタビュー。

少女マンガとは違う繊細な恋愛表現に魅力を覚えたBL作品

ーー『ちりぢりゆくの』は、宇宙人とのミックスで欲情するとゲル状に“散って”しまう美少年・久野シオと、マッチョで誠実なクラス委員長・相馬湊の恋愛を描いた、フレッシュでエンタメ性の高いBL作品です。まゆハル先生にとって初のBL作品ということで、チャレンジの経緯から聞かせてください。

 それまでは男女の恋愛、コメディ、アクションと色々なマンガを描いてきましたが、振り返ると、男性主人公ばかりでした。私はモノローグを描くのが苦手で、特に女性主人公の言葉選びや性格がどうしても共感性に欠け、馴染めなかったのかもしれません。そんななかで、「BLが面白い!」というきっかけになったのは、秀良子さんの作品です。広告が気になって、拝読した瞬間にトビラが開きました(笑)。少女マンガとは違った繊細な恋愛表現や言葉選びに感銘を受け、何度も読み返しました。次第に読む物もBLが主となっていき、自然と描きたいもの、面白いと思うものの傾向がBLに定まったという流れです。

ーー第一話からエンターテインメント性の高い作品になっていますが、連載に至るまでに紆余曲折あり、当初は設定も違ったそうですね。

 初めは読み切り作品として描いたのですが、現在のようなコメディではなく、切ない系統の作風でした。それを連載用に考え直そうということで、当初は相馬を主人公にしたコメディで連載会議に提案したんです。“散る”という設定も「好きな気持ちで体温が上昇する」というもので、「よく分からない」ということで落選。そこで、テンポよく、わかりやすくというコンセプトでブラッシュアップして、現在の設定になりました。シオを主人公にした途端、一気にコメディ要素が弾け出して流れがスムーズになりました。

冒頭のつかみが重要な読み切りだからこそ生まれた“散る”描写

ーー詳しくは本編を読んでいただきたいところですが、タイトルにもなっている「散る」という設定が秀逸です。特に男子からは「グロい」「気持ち悪い」と忌避され、それがシオにとってトラウマになっていますが、そこから「愛する人と性的なコミュニケーションが取れない」というロマンティックで切ない悩みにもなっていく。そこが物語のポイントにフックになっていますが、どんなきっかけでこのアイデアが生まれたのでしょう?

 そもそもは冒頭のつかみが重要な読み切りを描くときに、「好きな男と偶発的に指が触れ、散ってしまう。1人残された無言の男」という光景が浮かんできました。そこから「“散る”とは?」と設定を詰め込んでいったという流れです。当初はいまよりも「儚く美しく散る」ものにフォーカスしていました。

ーー“散る”描写は最初はエロティックに見えますが、物語の進展とともに美しいものに感じられるようになっていきますね。キャラクターのビジュアルも含め、読者からはフルカラーのリッチな作画への高い評価が寄せられていますが、どんなことを意識していますか。

 作画についてご好評いただいているのは、彩色まで作業を1人で行っているので、色味や光の加減などはこだわりが強く出ているのが理由の一つかもしれません。意識しているのは、白黒マンガの名残を出さないこと。モノクロの点描トーンをそのままカラー化することも可能ですが、作風の雰囲気に合っておらずいまは使用していません。また、現在の色味を出すために何度も試行錯誤を重ねるなかで、そもそも読者の皆さんお一人お一人のスマホ画面の環境が同じでないことに気がついたんです。自分のスマホの画面を暗めに設定していたことを忘れて色調整をしたので、少し鮮やかすぎる気がしています……。

 あとは、花やランタンの光など、カラーだからできる演出をするようにしています。ここぞという時ほど人物だけではなく背景に光や影を落としたり、スクリーン効果で印象的にしたり。特に光や鮮やかさはカラーの強みなので、意識しています。そして、1話につき、必ず一ヶ所は「サービスタイム」となるような決めゴマを作ってます!

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