ドラマ“あなおと”最終回直前! 宇垣美里 × 作画・梅涼 × 原作・宮口ジュンが語る『あなたは私におとされたい』の魅力
どこからが不倫? 指導とハラスメントの違いとは
――作中で直也はノアと連絡先を交換したり、仕事外でも顔を合わせるようになるなど、徐々に距離を縮め、その度に罪悪感を覚えていきますが、どこからが不倫だと思われますか?
宇垣:法律的な観点で考えたら、既婚者なのに第三者と肉体関係を持ってしまうとか、マッチングアプリを利用するのはもうダメだろうなと。でも、後ろめたいことはしないに越したことないですよね。私は、結婚で一番大切なのは相手をいかに信頼できるかだと考えているので、それができない人と一緒にいる意味ってなんだろうと思います。
宮口:“ゼッタイに不倫しない男”と“ゼッタイに不倫させる女”というテーマで書いていますが、私自身の不倫に対する価値観は実はすごく厳しいんです。相手に嘘を吐かれた瞬間に不倫だと思うタイプ。『あなたは私におとされたい』では、世間一般の価値観に合わせながらも、少しずつレベルを上げて書いているので個人的な主観とは結構ずれています。だから、自分で書いておいてなんですが、直也は結構早い段階で浮気してる!と思っていました(笑)。
――夏菜は職場で若手社員からハラスメントだと訴えられてしまいますが、ハラスメントと指導の違いについてはどう思われますか?
宇垣:結局、伝え方の問題ですよね。夏菜は普通に指摘すれば良いところ、つい叱責してしまう。少しだけ年上なだけですから、優しく教えてあげれば良いのにと思います。でも夏菜って、不器用だけどすごくエネルギッシュな女性ですよね。後輩に対してあそこまで激しく叱れるのはある意味すごく優しいってことなのかなとも思います。
――指摘がつい叱責になってしまう、この夏菜の心理状態を宮口先生はどのように考えていらっしゃいますか?
宮口:実は私、証券会社出身なんですよ。新卒でとある証券会社に入社したのですが、その時の先輩が夏菜以上に怖くて(笑)。当時は、今ほどハラスメントが大きく問題視される時代ではなかったので、そのせいもあったと思うのですが……夏菜の振る舞いは実話に近かったりします。実際に言われたセリフも入れていますし、今も現職の方に取材しながらリアルとのバランスを取って描いています。
「夏菜は自分の“強さ”を自覚すべき」もしアドバイスするなら……
――原作では、夏菜が直也の不倫疑惑や職場でのハラスメント問題などを友人の美紀に相談するシーンがあります。もし宇垣さんが夏菜の友人だったらなんとアドバイスしますか?
宇垣:ハラスメント問題に関しては、美紀が言っていた「出来るかじゃなくてやるしかないんだよ?」がまさしく!と思うので、同じようにアドバイスします。
やっぱり夏菜は自分の“強さ”を自覚すべきなんですよね。年齢を重ねて役職に就くということは、相手より上の立場にいるということ。たとえ何もしていなくても暴力的であることを絶対に考えないといけない。私も年下の子と接する時は、自分が思っている以上に優しく接しないと、相手を萎縮させたり、圧力を感じさせてしまっているかもしれないと気をつけるようにしています。
――直也の不倫疑惑についてはどうアドバイスしますか?
宇垣:それはもう本人に聞いたら?って(笑)。『あなたは私におとされたい』はもちろん、『ロミオとジュリエット』などを見ていても、いつも「報連相!」って思うんです。基本的な報連相がなっていないんですよ、全ては。だから、それができるかどうかは別として「まず本人に聞こう?」とアドバイスしますね。
――不倫やハラスメントなど、本作には梅涼先生が経験したことない出来事やそれによって生まれる感情がたくさん詰まっていると思います。そういった未知の感情を描く際はどのように工夫されているのでしょうか。
梅涼:キャラクターに感情移入して描くことを一番大切にしていますが、やっぱりそのためには感情を理解する必要があるんですよね。だから、不倫に関しては、不倫経験者の知人にその経緯や当時の心境などを取材させてもらいました。あと、当時その方がつけていた日記も見せてもらって、そこで触れた“ナマモノの感情”を自分に置き換えて描くようにしていました。感情移入できればできるほど、キャラクターの表情も豊かになると考えているのですが、もしかしたら俳優さんの演技とも通じる面があるのかなと思います。