【ラノベ週間ランキング】『ようこそ実力至上主義の教室へ』人気衰え知らず。ムズムズする設定の「ろしでれ」など話題作に注目

 時の勢いという意味では、週間ランキングで6位の燦々SUN『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん5』(角川スニーカー文庫)が次の「このラノ殿堂入り」に近いかもしれない。ロシア人の父親と日本人の母親を持つアーリャは、久瀬政近という同級生に向かってロシア語で言葉を投げることがある。アーリャは罵倒だと言うが実は政近はロシア語がネイティブレベルに理解できて、その言葉がデレであることが分かっていて、どう反応したら良いか分からず身もだえする。

 ムズムズするような設定が大受けして、通称「ろしでれ」シリーズは「このラノ2023」では文庫部門の5位に入った。最新刊では次期生徒会長を目指すアーリャへのサポートを通じて2人の仲が深まるのかと思いきや、初恋の人との再会があり、人気者になっていくアーリャへの複雑な気持ちも浮かんで恋模様はなかなか複雑に。全盛にあるライトノベルのラブコメ人気の中でも、「このラノ2023」で文庫部門4位の佐伯さん「お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件」シリーズともども、一頭抜けた評判を保ち続ければそろって殿堂入りとなる日も遠くはなさそうだ。

 週間ランキングで4位となった12月15日発売の白鳥士郎『りゅうおうのおしごと!17』(GA文庫)は、現実の世界で藤井聡太五冠が次々と記録を塗り替えていくのを横目に、現在二冠の九頭竜八一がスーパーコンピューターを相手に100年先の将棋を探求する様がなかなかに熱い上に、得られた答えがとてつもなく衝撃的。棋士たちが将棋を指す意味すら奪いかねないものだけに、どのような反響が起こって来るかが気になる。

 一方で、八一の弟子ながら今は訣別した状態で女流棋士戦に挑み続ける雛鶴あいは、三段リーグを経ないでプロ棋士になりたいと言って将棋界から反発を買う。それでも信念を貫くには強さを見せつけなければいけないと、師匠の八一にとって因縁ともいえるプロ棋士の碓氷尊九段に挑んで勝利を目指す。電子配信限定で12月15日に発売となった『りゅうおうのおしごと!16.5~あねでしのおしごと!~』には、八一が当時の碓氷竜王に挑む対局が描かれていて因縁の始まりが分かる。合わせて読みたい。

 映画「劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編」が公開された伏瀬「転生したらスライムだった件」シリーズも、人気が定着し過ぎた結果、最新刊の『転生したらスライムだった件』(GCノベルズ)が週間ランキングで2位に入りながら、「このラノ2023」のランキングでは単行本・ノベルズ部門で13位に留まっている。週間ランキングで『続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー』(電撃文庫)が3位の佐島勤「魔法科高校の劣等生」シリーズも「このラノ」ランキングでは入って来ない。

 こうして見ると、ライトノベル好きの間で盛り上がっている作品と、定番となってコンスタントに売上げを伸ばしている作品との間にギャップがあることが分かってくる。どちらもチェックしていくことが、立体的にライトノベルの動向を理解する上で必要なことなのかもしれない。

関連記事