おいでやす小田 なぜモノを捨てられない? 初エッセイから見えた買い替えられない幸福論
捨てない暮らしは、豊かな暮らし?
――モノを捨てずに長く使うことで得られるメリットや、魅力はありますか?
小田:安心感が得られるというのは、あるかな。バスタオルだって本当はカビ臭くない方がいいけど、愛着をもっているので安心できるんです。捨てて後悔することがないのもメリットかなと。あと、家電製品がそうなんですが、便利さに呑み込まれるのが怖いんです。一度、高機能の製品を使ってしまうと、世の中が不便になってしまったときに二度と戻れないんじゃないかという恐怖があります。身の回りのモノは、ある程度は自分でコントロールできるモノがいい、という思いが強いのかもしれませんね。
――それに、家電は最新のモノが最良とも限りませんよね。
小田:そうです。最新なら何でもいい訳じゃなくて、型が古くても、使いやすいモノであれば良いと思うんです。気に入っているなら、よほどの故障が起こらない限り、周りに流されて新しいモノを買い替える必要がない。
――米だって、最初に登場するガス式炊飯器で炊くと美味しいですし、敢えて買い替える必要がないといえます。
小田:米はガスで炊いた方が絶対に旨いですね。僕の基準でも、さすがにここまで古びた家電製品なら、本来は捨てる対象になるんです。でも、外食をしても家のご飯が一番旨いと思ってしまう。家で美味しい米が食べれなくなるのは損なので、捨てようにも捨てられないんです。
――その気持ち、とてもよく分かります。むしろ豊かな生活のように感じます。
小田:万が一、今使っているものが壊れてしまって買い替えるとなれば、次もガス式炊飯器になると思うんです。でも、新しく買ったら一生ガスが通っている家に住まないといけない。それは不便だなと思うと、悩んでしまって……めっちゃ迷っている状態で先延ばししています。
――小田さんの収入が桁違いにアップしたら、現在使っているモノを一気に買い替えるようなことはあると思いますか?
小田:明らかに壊れたとか、最新型の機能が劇的に良くなったなど、はっきりした理由がなければ買い替えませんね。紛失したり、使い切った場合は買いますけど。だから、綿棒はなくなるまで一生かけてでも使い切ります。最後の一本をやっつけないと、次にいけない気がするんです。目薬も、どんなに使用期限が切れていても、最後の一滴をさし終わらないと次に行けません(笑)。
生活の価値観が同じ人間は相性がいい
――改めて出来上がった本を見て、いかがでしょうか?
小田:僕の愛用品をよくぞここまできれいに撮ってくれて、すべて報われたという感じがします。物持ちがよくて本当に良かったなあ、と思いました。そして、僕にとってまた一つ、捨てられないモノが増えました。この“本”です。
――帯には、ダウンタウンの浜田雅功さんが「この本まず捨てろ」と、痛快なコメントを寄せていますが(笑)。
小田:『ダウンタウンDX』が本を出すきっかけの一つでしたし、ダメ元で浜田さんにお願いしたんです。そしたらオッケーをもらったんですよ。嬉しかったですね。浜田さんの凄さって、名前が出ていなくても、コメントを見ただけで浜田さんの発言だって分かることですよ。ほんま、サイコーです!
――今後もまた、本を出したいとお考えですか?
小田:まったくモノとは関係ないですけど、ピン芸人にスポットを当てて、深掘りするような何かができればと、ずっと考えています。それが叶うなら本という形でもいいかもしれないですね。
――お笑いだけでなく俳優など活躍の幅を広げられていますが、今後やってみたいことはありますか?
小田:「おいでやす小田」といえばこの番組、みたいなイメージが誰でも湧いてくる存在になりたいですね。それはレギュラー番組でも、MCでも、ロケでも構いませんし。ありがたいことに、いろいろな方面からお声がけをいただいています。俳優なんか、むちゃくちゃ難しいですよ。芸人がいかに普段から適当にしゃべっているのか分かります。でも、さまざまなことに挑戦する機会をいただけるのは僕にとってすごくプラスですし、何より楽しいんです。
――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。
小田:本の企画が決まったときは、呆れてもらえればいいなとか、こんな奴おらんやろ! と笑い飛ばせる内容にしようと思っていました。ところが、自分みたいにモノを捨てられない人が、予想以上に多いことに気づいたのは驚きでした。この本をきっかけに、友人や知人に自分の性格を打ち明けて、話をする機会が生まれたら嬉しいですね。生活の価値観が一緒な人間同士って、きっと相性がいいと思うんですよ。新しい出会いや絆が深まるきっかけにこの本がなってくれたら、僕としては本望です。
写真=森好弘(人物)、永留新矢(物)
イベント情報
単独ライブ おいでやす小田ベストネタライブ「オーバースロー」
※公演に収録が入り、後日、有料・無料に関わらず、放送・配信等の可能性がございます。予めご了承ください。
日時:2022年11月3日(木) 開場19:00/開演19:30/終演21:00
料金:前売¥3,000/当日¥3,500/オンラインチケット¥1,800
チケット発売:
FANYチケット https://yoshimoto.funity.jp/
FANYオンラインチケット https://online-ticket.yoshimoto.co.jp/
※販売期間:11月5日(土)12:00まで
お問合せ:FANYチケット 0570-550-100