話題の日本漫画家協会オークションで、里中満智子の色紙を52万6000円で落札! 到着までを完全レポート
オークションで色紙を落札!
10月3日からスタートしている、日本漫画家協会のチャリティーオークション。高額入札が相次ぎ、『メイドインアビス』の作者・つくしあきひとの色紙は200万円を超える価格で落札された。
筆者は10月9日に1回目のオークションで、日本漫画家協会の理事長・里中満智子が描いた『天上の虹』の額田王の色紙を52万6,000円で落札した。
落札日当日に決済を終え、10月13日に発送の連絡がある。そして、ついに14日、色紙が届いた。これから入札を検討している人の参考になればと思い到着までをレポートしていく。
そもそも、入手したいと思ったきっかけは、純粋に作品が好きだからである。それに尽きる。投機目的に美術品を買う人はたくさんいるが、対して漫画家の色紙を落札する人は、純粋に作品のファンが多い印象である。
里中の色紙を選んだのにも理由がある。何を隠そう、筆者は過去に奈良県の仕事で壬申の乱をテーマに里中にインタビューをしたことがあるのだ。さらには雑誌『サライ』の取材で何度も奈良は訪れ、明日香村や藤原京周辺も取材している。いわば、『天上の虹』の作品の舞台を、聖地巡礼しまくっているのである。そんな縁もあり、里中の直筆でしかも好きな作品の絵ということもあれば、手元に置きたくなるのがファン心理というものだ。
それでも、高額になることが予想されたので入札は躊躇していた。ところが、オークション最終日の10月9日、秋田県横手市の「横手市増田まんが美術館」に立ち寄る機会があったが、ロビーに飾られていた里中が描いた『天上の虹』の巨大な絵に圧倒されてしまった。これを見たら、何が何でも欲しくなってしまった。終盤はかなり競り合ったものの、かくして無事に落札することができたというわけだ。
ついに色紙が宅急便で到着!
14日、クロネコヤマトの宅急便で色紙が届くということで、家の中で全力待機することにした。ちなみに前日の夜は興奮のあまり、まったく寝れなかった。
そわそわして待っていると、ピンポーンと呼び鈴が鳴ったので、さっそく駆けつけたら、(自主規制)の勧誘であった。一気に緊張感が解けてしまった。再び全力で待機する。
芸術作品と呼ぶにふさわしい色紙を心ゆくまで楽しめるのは、落札者だけの特権であろう。なおかつ、額田王といえば歌人として名高い多芸多才な人物なのだが、筆者もそういう立派な人になれるように頑張りたいと思った。
いったん、所有していた色紙用の額縁に入れてみた。これだけでも非常に絵が引き立ち素晴らしいのだが、額縁は今度、イメージに合ったものを専門店で選んでみようと思った。その様子も、後日レポートしようと思う。
色紙を見てもらう機会を作りたい
筆者は漫画家の色紙の愛好家だが、それは生まれ育った環境が大きく影響している。故郷の秋田県羽後町の隣、横手市には漫画の原画を展示する殿堂「横手市増田まんが美術館」がある。子どもの頃から現在まで200回くらいは行っているはずだが、常設展や原画展に通いまくって、原画を数多く見てきた。そして、中学生の頃に母校も同じ地元出身の漫画家・おおひなたごうから『おやつ』のキャラが描かれたサイン色紙をもらい、漫画家の色紙がもつ魔力に圧倒されてしまったのだ。
私は才能も努力も足りなかったので漫画家にはなれなかったが、妻は漫画家である。それほど漫画が好きだし、原画や色紙の魅力や素晴らしさは理解していると思っている。
横手市増田まんが美術館の設立にかかわった矢口高雄は、倉敷の「大原美術館」の設立者・大原孫三郎の発言をたびたび引用し、漫画家になるためには優れた原画を見ることが重要であると説いた。筆者はそれプラスアルファ、地元で発表の場があることが重要と考え、2007年から町おこしイベントの一環として、主に地元の中学生に向けた「かがり美少女イラストコンテスト」というイラストコンテストを定期的に開催してきた。
このコンテストからは何人もの漫画家、イラストレーター、アニメーターが輩出された。また、県外から来場した人に向けて私が企画した、JAうごの「美少女イラスト入りあきたこまち」は地元のヒット商品になった。
昨年はコロナ騒動の影響でコンテストこそ開催できなかったが、地元出身の漫画家・辻永ひつじの原画展を「道の駅うご」で実施できた。子どもたちはコロナ騒動の犠牲になり、修学旅行やイベントが相次いて中止に追い込まれていたため、少しでも楽しめる場を提供したいという想いがあった。
今回落札した里中満智子の色紙も、許可が得られれば、どこかで公開したいと思っている。私の友人には漫画家の色紙や、日本画、現代美術などのコレクターがいるが、彼らのコレクションは基本的に人の目に触れることはない。保存のためにはもちろんしまい込んだ方がいいのだが、私はせっかくなので、多くの人に見てもらう機会を作れたらと思っている。矢口高雄はそうした理念のもとで、美術館を造ったのである。私もその意志を少しでも受け継ぎたい。
今回のオークションは、入札に参加している人も、参加していない人も絵を見るだけで存分に楽しめるはずだ。今後も動向を追っていきたいと思う。