海が走るエンドロール、ブルーピリオド、A子さんの恋人……人気漫画から“創作と海”の関係を考える
『A子さんの恋人』
美術大学時代の同級生たちの日常が描かれる『A子さんの恋人』。タイトルにもあるように30歳を目前に控えた漫画家・英子の恋愛事情が物語の軸となっているのだが、美術大学を卒業したキャラクターそれぞれの生き様が描かれる。
本作において美術大学に進学し創作の道を志した彼ら彼女らを語るなかで「海」は用いられる。漫画家やデザイナーとして働く人物は海を泳ぐ者として、創作活動に見切りをつけ予備校講師や販売員として働く人物は波打ち際で彼女たちを眺めるかのように描かれる。
創作活動をつづける人物を海の世界で描いている点は『海が走るエンドロール』と重なるし、作中で自分を見失った人物たちを溺れているかのように描いている点は『ブルーピリオド』とも重なる。
ただ海へ出たキャラクターたちは淡々と泳いだり、浅瀬で足を取られたり、浜辺を気にしながら泳いだりなど、泳ぎ方はそれぞれに異なる。さまざまな泳ぎ方があるように、創作に向き合う姿勢も人それぞれに合ったものがあるのだろう。
海に出会い、対岸という目標を目指しながら船を出す。ときに空模様が海を荒らし、追い風や逆風が吹く。ときに溺れてしまうこともありつつ、海を渡るなかで自分の泳ぎ方を見つけていく。そんな航海のような生き方に魅力を感じたのであれば、もしかしたらあなたは“作りたい側”の人なのかもしれない。